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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1419   

抗告CS1/特許出願/進歩性

 
体系 行政行為
用語

抗告のケーススタディ1

意味  抗告とは、民事訴訟法上において、判決以外の裁判である決定及び命令に対する上訴を言います。



内容 @抗告の意義

(a)裁判所における判決以外の決定に対する不服申立てとして抗告の制度があります。

(b)決定の一例として、例えば仮処分の申立てに対する決定があります。

(c)しかしながら、当該決定を行った時点での事情が変更されると、その決定を維持することの妥当性が失われ、当該決定に対して抗告が行われると、その決定を取り消す決定が行われる場合があります。

 ここでは、こうした事例を紹介します。


A抗告の事例の内容

[事件の表示]平成14年(ラ)第176号

[事件の種類]仮処分決定取消事件(認容)

[発明の名称]採光窓付き鋼製ドアの製造方法

[事件の経緯]

(a)被告は、“採光窓付き鋼製ドアの製造方法”と称する発明について付与された特許権(第1861289号)を所有する特許権者である。

(b)本件特許の請求の範囲は次の通りである。

「採光窓部の絞り線のコーナー半径が絞り加工によってほぼ20mm以下に形成される両面フラッシュドアにおいて、前面と背面パネルの少なくともいずれか一方の採光窓部の絞り線より内側にパネル板厚のほぼ8倍以上のフランジ代を残した開口を設け、該開口の各コーナー部に前記絞り線の各コーナーの曲線部分中央からの最短距離がパネル板厚のほぼ8倍以下となる隅フランジ代を、先端に丸味を備えた切れ目または切り欠きによって形成し、上記構成の両パネルを絞り加工によって絞り線の部分で内側に折り曲げ、フランジ代が折り曲げられた両パネルをドア枠体と採光窓枠とに接着剤その他の手段を用いて固着し、両パネルと一体化された採光窓枠に採光用窓ガラスを挿入して保持させたことを特徴とする採光窓付き鋼製ドアの製造方法」(請求項1)

(c)被告は、平成9年10月28日、本件特許権に基づき、本件原告を被告とする特許権侵害差止等請求訴訟(大阪地方裁判所平成9年(ワ)第10905号。以下「前訴」という。)を提起するとともに、同日、本件原告を債務者として、その採光窓付き鋼製ドアの製造販売の差止等を求める仮処分(大阪地方裁判所平成9年(ヨ)第2741号。以下「本件仮処分事件」という。)を申し立てた。

(d)本件仮処分事件につき、平成10年3月26日、債権者である本件被告の申立てを認める命令が発令された(以下「本件仮処分命令」という。)。

(e)本件仮処分事件の債権者である本件被告は、執行官に対し、本件仮処分命令の執行を申し立て、担当執行官は、平成10年4月2日、同事件債務者である本件原告の本社工場内にあった採光窓付き鋼製ドア2枚につき、債務者の占有を解いて執行官の保管とする執行を行った。

(f)ところが、本件特許権(請求項1)に対する無効審判請求事件(無効2000−35670号事件。本件原告を請求人とする。)において、平成13年11月9日、進歩性の欠如を理由として本件発明についての特許を無効とする審決が出された。

 本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である特公昭53−11791号特許公報(刊行物1)及び実開昭63−62219号のマイクロフィルム(刊行物2)に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたというのである。

(g)本件仮処分事件の債務者である本件原告は、上記の無効審決を根拠として、本件仮処分事件につき事情変更による保全取消しを申し立てた(大阪地方裁判所平成13年(モ)第59032号)ところ、平成14年2月1日、上記の本件仮処分命令は取り消された。

(h)上記の保全抗告事件(大阪高等裁判所平成14年(ラ)第176号)においても、平成14年7月31日、その保全抗告を棄却する旨の決定がされた。

(i)本件被告は、上記(1)の無効審決に対する審決取消請求訴訟(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第575号)を提起したが、平成15年3月26日、本件無効理由の存在を根拠として、同事件原告(本件被告)の請求を棄却する判決が出され、同判決に対しては上告又は上告受理の申立てがされることがなく、同判決は確定した。

(j)上記3(1)の前訴も、弁論終結後の平成15年7月28日の和解期日において、原告の請求放棄により終了した。


[コメント]

 本事例では、平成13年11月9日に無効審決が出され、平成15年3月26日に当該審決が確定する間に、この無効審決が出されたことを事情の変更として、仮処分命令が取り消され、この取消に対する抗告も棄却されました。

 同じように無効審決が出されてから確定するまでの間に仮処分が取り消されたものの、当該取消に対する抗告がされたため、審決取消訴訟の決着(審決取消)まで仮処分が維持された別の事例もあります。
抗告のケーススタディ2

 本事例では、特許出願前に公開された刊行物の組み合わせを理由とする進歩性の欠如が無効理由でしたが、別の事例では、発明の明確性及びサポート要件の欠如が無効理由でした。無効理由の内容から本事例では審決が覆る可能性は低いと判断されていたものと推察されます。

 なお、本事例では、取り消された仮処分により債務者が被った被害について損害賠償が請求されています。
仮処分のケーススタディ1



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