内容 |
@法律審の意義
民事訴訟では、第一審及び控訴審は事実審であるのに対して、上告審は法律審です。 →事実審とは
従って、その上告は、原判決の法令の不遵守・適用の違背を理由とする場合に限りすることができます。
すなわち、事実問題(事実認定の誤り)を主張したり、新たな事実や証拠の提出は許されません。
A法律審の内容
(a)法令の適用の違反の具体例として、リパーゼ判決を解説します。 →リパーゼ判決とは
この事件は、特許出願の拒絶査定不服審判の審決取消訴訟で審決を取り消す旨の判決に対して上告された事例です。
当該特許出願の請求の範囲には、“リパーゼ”という言葉が用いられていました。
“リパーゼを用いる酸素的鹸化及び遊離するグリセリンの測定によってトリグリセリドを測定する場合に、鹸化をカルボキシルエステラーゼ及びアルキル基中の炭素原子数10〜15のアルカリ金属―又はアルカリ土類金属―アルキル硫酸塩の存在で実施することを特徴とするトリグリセリドの測定法。”
この特許出願の明細書には、リパーゼの一種であるRaリパーゼを発明の実施に使用できることが記載されており、それ以外のリパーゼは不適当である旨が記載されていました。
拒絶査定不服審判では、“リパーゼ”を文言通りに解釈したのに対して、審決取消訴訟では発明の詳細な説明の記載を参酌すると、当該特許出願の請求の範囲の“リパーゼ”という用語は、“Raリパーゼ”であると解釈するべきであると解釈し、審決を取り消すべき旨の判決を出しました。
特許庁は、この判決に特許法第70条の解釈に誤りがあるとして、上告しました。
最高裁判所は、次のように判示し、判決を破棄しました。
特許出願の審査で新規性及び進歩性を審理するにあたっては、文献公知発明等との対比の対象として、特許出願に係る“発明の要旨”が認定されなければならず、
当該発明の要旨は、原則として、特許出願の願書に添付された特許請求の範囲の記載に基づいて定めるべきであり、
特別の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない、
そして特段の事情とは次の通りである。
・特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合。
・一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかである場合。
こうした事情の見当たらない本件においては、控訴審の判決は破棄されるべきである。
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