内容 |
①事情の変更の意義
(a)民事保全法第38条によれば、“保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。”
(b)被保全権利とは、民事保全法に基づく仮差押え・仮処分の手続において保全されるべき権利を言います。
(c)保全の必要性とは、本案訴訟の前に暫定的な措置(保全処分)をとることを正当化できる程度の具体的な必要性をいいます(→保全の必要性とは)。
(d)事情の変更があっても、保全命令は当然に効力を失うのではなく、債務者の申立てにより取り消されます。
(e)前記申立てを行う債務者は、事情の変更を疎明する必要があります。
②事情の変更の内容
(a)知財の分野では、例えば特許侵害訴訟において、侵害行為を差し止める仮処分の命令は、特許権の有効な存在を前提として出されるものであり、命令が出された後に、特許権が消滅したときには、侵害行為を停止することを求める債権者としての立場(被保全権利)が消滅するため、仮処分の取消の理由となります。
特許権の消滅事由としては、
・特許権の存続期間(特許出願の日から20年間)の満了
・特許維持年金の不納、
・無効理由(例えば特許出願の日前に公開されていた先行技術から当業者が容易に発明することができ、いわゆる進歩性を欠如したなど)により無効審決が確定したこと
などがあります。
特許権が消滅した後でも損害賠償金の支払いを求めて特許侵害訴訟を継続することはできますが、係争物の製造・販売などを差し止める権利はありません。
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