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1445 処分の対象となった物の実質同一性/特許出願/進歩性 |
体系 |
権利内容 |
用語 |
処分の対象となった物の同一性 |
意味 |
延長登録の理由である処分の対象となった物とは、特許発明の対象である物であって、薬事法等の処分を受けることが必要であるために、当該特許発明ができなかったときのその物であり、
その物の同一性とは、審査対象を形式的に比較するのではなく、医薬品等の処分の対象の実質的な同一性を言うものを言う。
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内容 |
@処分の対象となった物の同一性の意義
(a)特許権の存続期間の終期は、特許出願の日から20年間であることが原則です。
特許制度は、特許出願人が開示した新規かつ当業者が容易に創作できない(進歩性)ような程度の発明を国家に開示し、かつ社会に開示したことの代償として、一定の期間に限り独占排他権たる特許権を付与し、当該期間の後には発明の自由実施に委ね、以って発明の利用及び保護を図ることで産業の発達に寄与するものです(特許法第1条)。
従って、特許出願の日から20年間という特許権の存続期間の終わりを変更することは、特許制度の根幹を揺るがすことです。
しかしながら、いわゆる薬事法などの処分を受けることが必要であったために、特許出願の日から一定の期間で終了するという保護期間が侵食された場合に、本来の保護期間を担保するために、特許権の存続期間を延長する制度が採用されました。
(b)特許権の存続期間の延長登録の効果は、「政令で定める処分の対象となった物」についての当該特許発明の実施以外の行為には、及びません(特許法第68条の2)。
従って、存続期間が延長された特許権の効力の解釈においては、「政令で定める処分の対象となった物」の同一性が判断されます。
しかしながら、この同一性を、単純に延長登録を受ける処分の審査事項の一致・不一致で判断すると、実質的に特許発明された発明に関して侵食された存続期間を補填するという延長登録制度の趣旨を達成できません。
従って、“政令で定める処分の対象となった物の同一性”とは、医薬品などの実質的な同一性の範囲と解釈するべきです。
こうした解釈に関して、関連する判決を説明します。
A処分の対象となった物の同一性の内容
(a)この件に関して、平成27年11月17日に出された、平成26年(行ヒ)第356号(血管内皮細胞増殖因子アンタゴニスト事件)の判決の一部を紹介します。
“医薬品医療機器等法の規定に基づく医薬品の製造販売の承認を受けることによって可能となるのは,その審査事項である医薬品の「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(医薬品医療機器等法14条2項3号柱書き)の全てについて承認ごとに特定される医薬品の製造販売であると解される。
もっとも,前記のとおりの特許権の存続期間の延長登録の制度目的からすると,延長登録出願に係る特許の種類や対象に照らして,医薬品としての実質的同一性に直接関わることとならない審査事項についてまで両処分を比較することは,当該医薬品についての特許発明の実施を妨げるとはいい難いような審査事項についてまで両処分を比較して,特許権の存続期間の延長登録を認めることとなりかねず,相当とはいえない。
そうすると,先行処分の対象となった医薬品の製造販売が,出願理由処分の対象となった医薬品の製造販売を包含するか否かは,先行処分と出願理由処分の上記審査事項の全てを形式的に比較することによってではなく,延長登録出願に係る特許発明の種類や対象に照らして,医薬品としての実質的同一性に直接関わることとなる審査事項について,両処分を比較して判断すべきである。”
(b)同様の考え方は、平成21年5月29日の平成20年(行ケ)第10460号(パシーフカプセル事件)でも示されています。
“特許発明が医薬品に係るものである場合には,その技術的範囲に含まれる実施態様のうち,薬事法所定の承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施,及び当該医薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ,延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,技術的範囲の通常の理解に照らして,当然であるといえる。)。”
(c)しかしながら、この判決のうちで“均等物”に関する部分に関しては後の判決で否定されています。従って処分の対象となった物の同一性に対しては、均等論が適用できない点に注意する必要があります。
→延長登録の処分の対象となった物への均等論の適用の可否
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