体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
記録による禁反言(Estoppel by Record) |
意味 |
記録による禁反言(Estoppel by
Record)とは、裁判所の正式記録の中で認定されている事実を否定することは許されないという原則です。
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内容 |
①記録による禁反言の意義
(a)禁反言の原則は、英米法の判例の中から生まれた原則であり、個別の事案の事象に応じて、記録による禁反言(estoppel by
record)、証書による禁反言(estoppel by deed)など多種多様なパターンがあります。
このうちで裁判所(又は議会)の記録に記載された事柄を否定することができないという原則を、記録による禁反言と言います。
なお、米国特許商標庁に記録された特許出願の履歴も広い意味では一種の記録ですが、前記履歴に矛盾する主張をすることができないという記録は、ファイルラッパー・エストッペルと言います。
→ファイルラッパーエストッペルとは
(b)記録による禁反言の態様として、次のものがあります。
・法的禁反言(judicial estoppel)
法的禁反言によれば、何らかの法的過程においてある法的地位を主張した当事者が、その後に別の矛盾する地位を主張することが禁じられる。
→法的禁反言(judicial estoppel)とは
・コラテラル・エスペットル(Collateral
estoppel)
コラテラル・エスペットルによれば、同じ当事者を含むケースにおける有効な判決により既に決定された論点についての議論を蒸し返すことが禁止されます。
→コラテラル・エスペットル(2次的禁反言とは)
②記録による禁反言の内容
(a)米国特許商標庁で実際の特許出願に対するヒヤリングでの決定から、“estoppel by deed”という言葉の使用例を引用します。
同一の出願人によって、同一発明について異なる日に2つの特許出願が行われ、これらのうちの先の出願が裁判所で拒絶された場合に、米国特許商標庁が後の出願に関して記録による禁反言の原則を適用した事例です。
このヒアリングの判断を以下に引用します。
“従って私は、記録による禁反言を根拠として、この特許出願を拒絶する。何故なら、当該出願は、同一人(Mr.W)によってなされた先の特許出願と同じ発明に対して行われ、当該先の特許出願は裁判所により拒絶されているからである。”
“I therefore refuse this application on the grounds of estoppel
by record because it is for the same invention as described in Mr
W’s earlier applications that were refused by the Patents Court.”
(BL O/055/06 (Whether patent application GB 0517681.3 is subject
to estoppel by record))
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留意点 |
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