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1504 Comity(礼譲)/特許出願/均等論 |
体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Comity(礼譲) |
意味 |
Comity(礼譲)とは、法規範ではなく、事実上の便宜または他者に対する礼譲の結果として守られる規範を言います(有斐閣・英米法辞典)。
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内容 |
@Comity(礼譲)の意義
(a)裁判所は、拘束力のある上位の裁判所の判決に従う義務を負いますが、実際には、先例として拘束性無き裁判所の判例にも従われる場合が数多く存在します。
これは、前述のコミティ(礼譲)に基づくものと考えられます。
(b)法律上、コミティとは、国・州・管轄の異なる裁判所のような異なる政治的主体の間でのプラクティスであり、具体的には、立法上(legislative)、行政上(executive)、及び司法上(judicial)の行為の相互承認を意味します。
コミティに基づいて、国・州・管轄の異なる裁判所の判決を承認することを、Doctrine of
comityということがあります。 →Doctrine of comity (礼譲の原則)とは
(c)コミティという言葉は、ラテン語のcomitas(礼節)やfriendly (友好)に由来すると言われています。
(d)英国においては、コミティの概念は、法律家(barrister)であったマンスフィールド伯爵によってイギリス法にもたらされた、と言われています。
彼は、“自然な正義とバブリック・ポリシーとに反しない範囲において”権限者の裁量により法廷に外国の法律を適用することを提唱した。
“自然な正義”に反してないとは、例えば人身売買を前提とする奴隷制度の下で外国で認められている権利でも、これをイギリスが認めなければならない謂れはないということです。
これは、実際にあった出来事{Somerset v Stewart事件(1772年)}に関する見解です。
AComity(礼譲)の内容
(a)Comityは、法規範ではないので、訴訟の当事者がこれを主張しても裁判所がこれを採用しない場合もあります。
(b)例えば、ウィンターズ事件{280 U.S. 30 (1929)
}は、特許出願人が表現したクレームの狭い記載(ほぼ発明の実施態様そのままの記載)に対して均等論を適用する是非が争われた事件であり、同じ特許権の関して、まず一つの裁判管轄で発明品(ラッチ)の利用者(冷蔵庫製造業者)を訴え、次に別の管轄でラッチの製造業者を訴えた事件です。
・第1事件:第一審(請求認容)→第二審(原判決維持)
・第2事件:第一審(請求棄却)→第二審(原判決維持)
2つの事件で提出された証拠は実質的に同じでしたが、第一審で正反対の結論が出され、それぞれの控訴裁判所が原判決を支持したものですから、控訴裁判所の判決同士が抵触するものとして、最高裁判所への上告が認められました。
最高裁判所は、この事件をコミティの観点で処理することはできないとして、その理由を次のように説明しました。
“礼譲の原則は、法律上のルールではなく、便宜及び打算(convenience and expediency)の上のルールである。
そしてこれらのメリットの観点から第3巡回控訴裁判所のアクションを我々が正しいと考えるときには、たとえ我々が前記礼譲の原則に重きを置けないという意見をとる場合であっても、第3巡回控訴裁判所のアクションは取り消されるべきではない。”
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