体系 |
条約 |
用語 |
パリ条約優先権の発生条件 |
意味 |
パリ条約優先権は、最初の出願であることなど、同条約で定めた一定の条件を満たすことを条件として、発生します。
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内容 |
①特許・実用新案・意匠・商標などの保護(工業所有権という)は、各国の産業政策に密接なので、各国が自由に定めることが大原則です(領土主権の原則)。そして何れの国も、本音を言えば外国人より自国民(内国民)を手厚く保護したいと思っています。パリ条約において、単にパリ条約優先権の効果を定めても発生条件を何も定めていないとして、同盟国が徒に厳しい条件を付けると、優先権制度が外国人にとって使いにくいものとなり、実効性を損なう可能性があります。そこでパリ条約優先権の発生条件が条約の規定として明記されています。
②パリ条約優先権は、対象である出願が、特許出願、若しくは実用新案・意匠・商標の登録出願(以下「特許出願等」という)である場合に発生します。
③パリ条約優先権は、同盟国に正規の特許出願等をした者又は承継人が他の同盟国へ特許出願等をする場合に発生します。
④「正規の」とは、結果の如何を問わずに出願日や内容を確定できる程度の形式要件を具備しているという意味です。
例えば特許出願の願書や明細書等の形式要件を欠いており、出願の体をなさない(例えば誰が特許出願をしたのか、何を発明したのかが判らない)場合には、パリ条約優先権が発生しません。
「結果の如何を問わずに」とは、出願日が確定すれば、特許出願等が後日拒絶されたとしても、パリ条約優先権を否定されないという意味です。
⑤「承継人」とは、パリ条約優先権の承継人という意味です。同じ人物が発明をしていることを条件として、同盟第1国への特許出願を承継せずに、優先権のみを承継することができます。
⑥パリ条約優先権は、同盟第1国への特許出願等に基づいて、他の同盟国に対して特許出願等をする場合に発生します。通常は、自国の特許と出願等に基づいて外国出願をすることが多いですが、例えばアメリカに邦人がまず米国特許出願を行い、パリ条約優先権を主張して日本へ特許出願等をするような場合でもパリ条約優先権が発生します。
⑦同盟第2国出願は、国際特許出願(PCT出願)であっても構いません(→自己指定)。
⑧“優先期間は最初の出願から起算する”ものとされており、従って最初の特許出願のみがパリ条約優先権を発生させます。優先期間の実質的な延長を防止するためです。
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留意点 |
⑧に関して、例えば上位概念である発明Aについて特許出願イを行い、さらに存続期間や優先期間をかせぐために実質的に同一の下位概念の発明A’について特許出願ロをしても、後者はパリ条約優先権を生じさせません。例えば、一定の条件で例外があります(パリ条約4条C(4))。
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