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@属地主義の下で各国毎の方式・言語で特許出願等を行うと、同盟第1国出願と同盟第2国出願との間に、特許出願人にとって不利な時間的なズレを生じます。こうした問題に対応するため、パリ条約は、第2国出願を、発明の同一性などの一定条件下で、第1国出願の時にしたものと同等に扱う効果を与える優先権制度を採用しています。
しかしながら、第1国出願をした後に特許出願人が研究開発を継続して発明の改良や追加を行うことがあります。こうした追加的事項は、単独では発明的な性質を有しないもの(単独で特許出願すると先の発明と実質的に同一であるとして拒絶されてしまうもの)もあります。パリ条約優先権の同一性の条件を厳格に解釈すると、上述の追加的事項を第2国出願に含めることができず、特許出願人がより完全な形で権利化することが困難になります。
そこでパリ条約は、優先権を主張して行った特許出願が優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかった構成部分を含むことを認めています。
A「特許出願」という文言より、条約上で複数優先が保証されているのは、第二国出願が特許出願である場合のみであり、実用新案・意匠・商標の出願は対象外です。
もっとも発明者証出願は特許出願と同等に扱われます。
B「優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかった構成部分を含む」とは、パリ条約4条Hに照らして出願全体として開示された発明の追加的要素をいい、単独では発明的な性質を有しないものを含みます。
Cたとえば温度条件1000〜1500℃の発明に関するA国の特許出願に基づいて、温度条件1000〜2000℃の発明に係るB国の特許出願に優先権を主張するという場合が該当します。
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