内容 |
①特許庁長官は、出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときには、審査官に、その特許出願を、他の出願に優先して審査させることができます(48条の6)。
②特許出願の審査の順序は、出願審査の請求の順番に行うことが最も公平と考えられます。しかしながら、出願公開されたとき、第三者が特許出願に係る発明を業として実施していることに気づいて、特許出願人が審査請求をすることもあります。こうした場合にも原則通りに審査請求順に審査の結果を待っていると、特許出願人に不測の不利益を生ずることがあります。例えば独占排他権の登録がある前に、第三者の商品が大量輸入され、特許権を行使できるようになったときには、売り手の行方が知れないというようなことになると、特許をとる意味があるのかという疑問を産業界に生じかねません。そこで昭和45年改正で優先権制度が採用されました。
③「必要があるとき」とは、緊急に審査する必要があるときという意味です。第三者が特許出願に係る発明を業として実施している場合であっても、実施の状況により格別急ぐ必要がないというものに関しては優先審査をしません。
④「必要があるとき」とは、特許出願人の側からの必要に限らず、第三者の側からの必要も含みます。例えば、およそ特許になりそうもない(新規性のない)発明について特許出願が行われ、出願公開が行われた後に、出願人から、他の製造メーカーのみならず、その販売店などの得意先に補償金請求権の警告が発せられ、流通経路が混乱するような場合です。こうした営業妨害に近い行為を放置する理由はないので、特許庁長官は審査官に優先審査を行わせ、その特許出願について早期に決着をつけさせることができます。
⑤優先審査と早期審査とどう違うのかは判りにくいと思いますが、運用の条件が異なります。優先審査の”第三者が特許出願に係る発明を実施していること”という条件はかなり厳しく、その段階に到らない場合には、早期審査を検討するべきです。他方、早期審査の申請をすることができるのは、特許出願人又は代理人のみですが、優先審査は前述の如く第三者の必要に応じて行われる場合があります。
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