体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
発明特定事項として扱われない事項 |
意味 |
特許出願の請求の範囲に記載しても発明特定事項として扱われない事項を説明します。
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内容 |
@特許出願の請求の範囲は、発明の技術的範囲を定めるために記載するものであるので、そこには技術的な意味内容を特定する事項のみを記載するべきです。外国の特許出願の公報には、「図面に記載した通りの装置。」というような表現をした請求項(オムニバスクレーム)を見かけますが、少なくとも日本ではこうしたことは認められません。
A図面との関係で問題となるのは、請求の範囲に記載する部材に、図面と照合するための参照符号を振ることです。
図面に符号を入れることは、請求の範囲の理解を容易とする反面で、権利範囲を図面に現れた構成に限定されてしまうのではないかと言って敬遠する人もいます。
Bこの点に関して、次の判決ような判決があります(平成18年(行ケ)第10126号)。
「原告の上記主張は,要するに,特許請求の範囲の請求項1において,「軸部」の語に,軸部がガイド部に案内されない態様である実施例1の符号「21」が付されていることを根拠とするものであるが,特許請求の範囲には,「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」(特許法36条5項)のであり,ただ,「請求項の記載の内容を理解するため必要があるときは,当該願書に添付した図面において使用した符号を括弧をして用いる」(特許法施行規則様式29の2の[備考]14のロ)ことが許容されているにすぎない。そうすると,請求項の記載において,実施例に係る図面の符号が用いられたとしても,それは,単なる補助的な手段であって,請求項記載の発明の構成が当該実施例に係る具体的構成に限定されるものではなく,同様に,当該実施例に係る具体的構成によって,請求項記載の発明の構成が特定されるものでもない。」
C従って請求項に符号を入れたからと言って、直ちに請求の範囲の用語が図面に開示されたものと限定されるものではありません。
D個人的には、請求の範囲中の用語に符号を入れることで用語の意味が図面の態様に限定されるのではという心配をするよりも、明細書において用語の説明を充実させる(用語の意味は、図示の態様に限られず、…のような態様も含まれる)ということをした方がよいと考えます。
Eもっとも、米国特許出願の実務ではクレームに符号を入れないことが通常です。将来の外国特許出願を視野に入れて、予め符号を入れなくても容易に理解できるように、請求の範囲を記載するという考え方はあると考えます。
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留意点 |
米国特許出願のMEPE608.01(M)には次のように記載されています。しかしながら、これは審査官に適用されるものであり、裁判官を拘束するものではありません。
「明細書や図面に記載した要素と対応する参照番号は、クレーム中の同じ単一の要素或いは要素のグループについて使用できる。これらの参照番号は、クレーム中に現れる他の数字や要素と区別するために括弧中に入れて使用するべきである。これらの参照番号は、クレームの範囲を限定する効果を有しない。」
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