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特許出願の請求項に係る発明を客観的に認定するためには、当該発明の特徴的でない部分を客観的に認定し、その発明の構成から引き算することが必要です。そうした作業が引用発明との一致点を明らかにすることです。→引用発明との相違点
一致点を明らかにする際にやってはならないのは、引用例の無理な上位概念化です。ここで、上位概念とは、「同族的若しくは同類的な事項、ある共通する性質」といいます(新規性・進歩性審査基準)。例えば上位概念である金属は、「展性、塑性に富み機械工作が可能である」(インターネット辞書より)という共通の性質を有し、この性質に着目して、引用文献中の「○○の形状としたことを有する鉄製コップ」という発明から、「○○の形状としたことを有する金属製コップ」という発明を認定することができます。
これに対して平18(行ケ)10174号(「3次元物体の製造方法および装置」事件)では、進歩性の判断における“頒布された刊行物に記載された発明”について、「一方に存在しない技術を他方で補って併せて一つの引用発明とすることは,特段の事情がない限り,許されないものといわなければならない」という解釈を示して、一の刊行物1に開示された「光硬化性流動物質」と他の刊行物に開示された「液体,粉末等の材料」とは両者は明らかに異なるから,これらを“粉末等の材料”の如く上位概念化することは許されない、という判断が示しています。2番目の刊行物の「液体、粉末等の材料」から光硬化性という性質は観念できないですので、これは当然のことです。
また複数の公知技術の共通点を抽出して主引用例とし、これと特許出願の請求項に係る発明との一致点とすることができません。例えば刊行物1~2から引用発明(A+B)を認定するという如くです。そうすると刊行物1又は刊行物2を主引用例としたときに認定される筈である相違点(D、E)がなくなってしまうからです。
請求項に係る発明:A+B+C
刊行物1に記載された発明:A+B+D
刊行物2に記載された発明:A+B+E
不適切に認定された主引用例:A+B
事実認定において、特許出願に係る発明の進歩性を否定するのに都合のよいように引用例を作るのは、典型的なハインドサイト(後知恵)であり、許されません。
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