内容 |
拒絶理由通知書においては、進歩性の拒絶理由に関して、“(特許出願の)請求項1中のAは引用例1のA’に、請求項1中のBは引用例1のB’に…それぞれ対応する。”というように記載されています。“対応する事項”は、請求項に係る発明との一致点、すなわち、相違点と認められなかった事項です。しかしながら、一致点として認定されていても、文言通り一致していることは稀です。
特許出願の請求項に係る発明と引用発明との相違点を明らかにするときには、発明特定事項を対比するのであって、用語を対比するのではありません。同じ用語であって、技術分野が異なれば全く意味が違う場合はいくらでもあり、表現が相違しても、同じ技術的手段を意味していれば、相違点として認定することはできません。
さらに刊行物に記載された発明のうち当該発明に必須な事項であっても、特許出願に係る発明との関係において必要ない事項を捨象して、上位概念的な発明を認定し、一致点・相違点を認定する場合があります(→平成18年(行ケ)第10094号(「レンズ及びその製造方法」事件)。“AとBと含有するCであってAの重量が一定の関係式を満たすものを注型重合することを特徴とするエピチオ系レンズの製造方法”という開示内容のうち「Aの重量が一定の関係式を満たすもの」という
箇所を省略して引用発明を認定し一致点・相違点を認定した審決の判断が支持された事例です。この事例では、裁判所は次のように述べています。
「特許請求の範囲は、通常ある程度抽象的な文言により記載され、抽象的に記載された技術として特定されるのに対して、公知技術が記載された文献等は様々であって、具体的な態様のみが記載されているものも存在する。このような場合に、公知技術について、特許出願に係る発明との対比に必要な範囲で、その特徴的な要素を抽出して技術内容を特定、把握することは許されるというべきである。このことは、…進歩性の有無を判断する場合においても妥当するということができる。」
しかしながら、これとは逆に無理な上位概念化により相違点の認定を誤る可能性があります(→引用発明との一致点)
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