内容 |
①特許権者は、特許発明を業として独占排他的に実施(生産・販売・使用など)をすることができ、他人の実施を排除することができます。その特許権の効力は、最大で特許出願の日から20年間継続し、さらに損害賠償請求権の行使可能な期間を考慮に入れれば、特許出願の日から20年経過後もしばらく影響力を有します。
従って、特許権者としては、他人の実施品が特許発明の技術的範囲に入るかどうかを知りたい、同業者にとっては、実施しようとする製品が他人の特許権の効力に抵触するかどうかを知りたい、という切実な願望があります。
こうしたときに弁理士の鑑定を依頼することも可能ですが、各当事者がそれぞれ弁理士に鑑定を依頼し、逆の鑑定結果がでることもあります。
判定は、特許を付与する行政機関自身が鑑定的なサービスを行うものであり、かつ審判に準ずる厳格な手続を経て行われるため、権威ある判断として取り扱われることが期待されます。
②判定の性質
行政機関による公的な鑑定であり、それ自体により法律的な効果はありません。
例えば特許出願に対する特許査定は、特許料の支払いを条件として特許処分が行われる、特許無効審判での無効審決は、その確定により、特許権が遡及的に消滅するという法律的な効果を生じます。これに対して判定の結論には特別の効果はありません。
③判定の請求主体
特許権者、及び、侵害を受ける可能性がある相手方です。
後者の場合には、厳密な利害関係が必要ありません。現実に実施しておらず、判定の結果次第で実施を行うかどうか考えたいというような場合でも判定を請求できるようにするためです。
④判定の請求対象
特許権の権利範囲と抵触するかどうかが問われる物(特許権者の相手方が現に実施し、または実施していたもの、或いは特許権者が相手方なしで請求する場合には、自己の権利のものと比較するもの)です。
判定では、これを通常これを「イ号」と呼びます。イ号の内容は、イ号物件(現物)、イ号図面、イ号説明書などで特定します。
⑤判定の時期
特許権が消滅した後(存続期間満了の場合であれば、特許出願の日から20年を経過した後)でも請求することができます。前述の通り、損害賠償請求権を行使できる可能性があるからです。
⑥判定の審理主体
3名の審判官の合議により審理されます。
内容が技術的であるため、専門家の判断を経るためです。
⑦判定の手続
(イ)通常、判定請求書の受理→相手方への請求書の副本(コピー)の送達→相手方の答弁書の受理→合議体による審理→判定書の作成・送達という手順をたどります。
(ロ)私的鑑定と異なり、答弁書の内容を検討できる点で、より信頼度の高い判断が期待できます。
⑧判定に対する不服申立
判定書に対しては不服申立ができません。
一種の鑑定に過ぎず、法的拘束力がないからです。
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