内容 |
①反トラスト法の意義
(a)米国では、企業を自由に競争させる趣旨から大企業を放任することにより、逆に自由競争を阻害するという事態を招きました。
(b)そこで反トラスト法により企業の活動を制限することにしました。
(c)反トラスト法は、単一の法律ではなく、下記の3つの法律の総称です。
②反トラスト法の内容
(a) 反トラスト法には、次の法規があります。
(イ)シャーマン法(1890年)
・同法は裁判所にトラストを阻止・抑制する司法権を授与する法律です。
・またトラストを利用して市場独占を試みる者に訴訟を起こす権限を司法長官に授与します。
・この法律の管轄は反トラスト局です。
(ロ)クレイトン法(1914年)
・同法は、シャーマン法を補足する法律です。
・具体的には、価格差別・排他的取引(競合製品を購入しないことを求める取引等)・企業の合併・重役の兼任という方法による自由な市場の不当な制限を規制します。
(ハ)FTC法(1914年)
・同法は、FTCを設立し、これに(i)商取引における不公正な競争手段、不公正・欺瞞的な行為・慣行を防止すること、(ii)消費者に対する有害な行為に対して救済を求めること、(iii)不公平・欺瞞的な行為・慣行を特定する規制を制定すること、(iv)取引に従事する組織・ビジネス・慣行・経営方法を調査し、議会に報告することの権限を付与する法律です。
③発明者(特許出願人)や特許権者の保護との関係
(イ)米国の特許制度は、発明者を保護するために、特許出願をすること及び一定の要件が条件として満たされることを条件に、独占排他権を付与するものですが、特許出願が許可されたら、その独占排他権をどのように行使してもよいというわけではありません。
(ロ)米国特許法第211条は、“この章の如何なる規定は、何人にも、反トラスト法に関する民事・刑事上の責任を免責したり、訴訟上の抗弁権を与えるものではない”と定めています。
(ハ)例えば特許権者が他人に対して差止請求権を行使することに関しては、回復不可能な損害が存在することなどの制限が課されます(→eBay判決とは)。
これにより、自ら実施をする予定がなくて特許出願を行い、専ら他人の実施行為を差し止めることを業務とするような特許の活用形態(いわゆるパテントトロール)に制限がかかります。
(ホ)また技術標準の策定にあたっては、策定会議のメンバーが、技術標準の実施に必須の技術に関して特許出願するような場合には、当該技術に対して無償の実施許諾、或は少なくとも有償であるが合理的かつ
“非差別的”な実施許諾をすることを宣言することが参加者に求められます。
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