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665
一応の合理的な疑いを生じない場合/進歩性審査基準/特許出願/発明の構成 |
体系 |
実体法 |
用語 |
合理的な疑いを生じない場合(新規性・進歩性) |
意味 |
一応の合理的疑いを生じない場合とは、特許出願に係る物の発明が作用・機能・特性・性質などで特定されていながら、引用発明との厳密な行わずに引用発明の物と同一・類似の物と同一である疑いがあるとして特許出願人に拒絶理由通知を発することができないとして新規性・進歩性審査基準に特に規定されている場合をいいます。
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内容 |
①合理的な疑いを生じない場合が規定されている趣旨
技術の多様化に伴って請求の範囲の記載要件が緩和され、物の発明を物の構造以外の発明特定事項(作用・機能・特性・性質など)で特定することができるようになりました。
このことへの対応策として、新規性・進歩性審査基準は、審査官に対して、物の発明を物の構造以外の発明特定事項で記載され、当該発明特定事項で特定された特許出願人の発明と引用発明の物の発明との厳密な対比を行う場合に、そうした対比を行う前の段階で、引用発明の物の発明と同一・類似のものである旨の合理的な疑いがあり、そうであれば新規性・進歩性が否定される趣旨の拒絶理由通知を発することができるようにしました。
審査官が推測で請求の範囲を解釈して審査を進めるよりも審査手続の初期の段階で、その請求の範囲を書いた特許出願人本人に意見をきいた方が時間の節約になり、それにより早期権利化につながるのなら、特許出願人にも有利だからです。
しかしながら、物の発明が機能等で特定されていても、その機能等が技術常識を参酌して明確に理解できる場合もあるのは当然のことです。
②合理的な疑いを生じない場合の内容
(a)特許出願の請求項に記載された作用・機能・性質・特性が標準的なもの、当該技術分野において当業者に慣用されているもの、又は慣用されていないにしても当業者が理解することができるもののいずれにも該当しない場合
(イ)標準的なものとは、 JIS(日本工業規格)、ISO規格(国際標準化機構規格)又は
IEC規格(国際電気標準会議規格)により定められた定義を有し、又はこれらで定められた試験・測定方法によって定量的に決定できるものをいう。
これらの技術標準は、技術の普及を目的として公開されており、いわゆる当業者であれば当然理解できる筈だからです。
(ロ)当業者に慣用されているものとは、当該技術分野において当業者に慣用されており、その定義や試験・測定方法が当業者に理解できるものをいう。
これらも技術常識として当業者ならば判るはずのことだからです。
(ハ)慣用されていないにしても当業者が理解することができるもの
例えば特許出願人が考案した測定方法で測定された物の特性で特定されているが、特許出願の明細書に当該測定方法の実施条件が第三者により再現できる程度に十分に説明されている結果、当業者が物の特性を理解できるような場合です。
請求の範囲が、測定方法により特定される複数の特性を含んでいても、両者が同一の測定方法で特定されていれば、一般的には両者を対比して技術的意義を理解できるため、発明を理解することができます。
(b)特許出願の請求項に記載された個々の発明特定事項(作用・機能・性質・特性)が、標準的、慣用的、或いは慣用的でないが当業者に理解できるもののいずれかにに該当するが、これらの事項が複数組合わされたものが、全体として標準的、慣用的、或いは慣用的でないが当業者に理解できるものではないものに該当するものとなる場合
例えば異なる測定方法で特定された2つの特性が記載されており、両者を対比することができない結果として、両者の技術的意義が理解できないことがあります。
②合理的な疑いを生じない場合に該当しないときの取り扱い
(a)特許出願の各請求項の発明対象である物と引用発明の物とが同一であると疑われるとき
特許出願人に当該引用発明を具体的に示して新規性違反で拒絶理由通知を出します。 →一応の合理的な疑いを生じる場合(新規性)
(b)特許出願の各請求項の発明対象である物と引用発明の物とが類似であると疑われるとき
特許出願人に当該引用発明を具体的に示して進歩性違反で拒絶理由通知を出します。 →一応の合理的な疑いを生じる場合(進歩性)
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