内容 |
①懲罰的損害賠償の請求の意義
(a)懲罰的賠償権の歴史は古く、英国では1790年代の貴族院の時代から判例があります。例えばジョージ三世の時代に王の代理人が扇動的(seditious)な印刷物の出版業者を逮捕して懲罰的賠償を課したHuckle
v. Money事件(1763)あります。
(b)この時代では民法と刑法とが未分化であり、君主の裁量により制裁の手段としての懲罰的な賠償が課されることがありました。
(c)言い換えると、懲罰的請求権は、もともとは刑事制裁的な性質を有するものでした。
(d)このため、懲罰的請求権はイギリスでは抑制的に運用されていました。
(e)アメリカ合衆国が建国されたときに、懲罰的請求権の制度はコモンローの一部として英国から米国へ承継されました。
②懲罰的損害賠償の請求の内容
(a)米国合衆国では、民事訴訟の当事者の一方が他方に対して懲罰的損害賠償の請求権が行使されます。例えば有名なマクドナルド・コーヒー事件などです。
(b)損害額は、被告の行為が強く非難される場合に、非難されるべき程度に応じて、当非難されるべき行為を抑制するために十分な金額とするという考え方が従来の一般的な考え方です。
そのため、個人が大企業を訴えるときには、その金額は膨大なものとなる傾向がある、という批判があります。
(b)特に米国では民事訴訟法においても陪審制が採用されており、懲罰的損害賠償の請求の請求額も事実認定の一部として陪審員が判断します。
→陪審制とは
そのため、個人が大企業を訴える場合には、陪審員は個人に対して同情的な立場をとり、このために過大な賠償額が請求されているという批判もあります。
③特許法との関係
特許法では特許侵害に関していわゆる3倍賠償の規定があります。 →3倍賠償とは
しかしながら、3倍という限定があるとはいえ、実際の損害額を超える金額を賠償請求されるのは、被告にとって大変なことですので、原告の特許出願の経緯(意見書など)を含めてあらゆる観点から反論していくことが必要です。
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