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802
用途発明のサポート要件C1/特許出願/進歩性審査基準/ |
体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
用途発明のサポート要件のケーススタディ1 |
意味 |
用途発明とは、或る物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見い出すことに基づく発明をいいます(進歩性審査基準)。ここでは用途発明の特許出願が満たすべきサポート要件についてケーススタディします。
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内容 |
〔事例1〕
事件番号:平成20年(行ケ)第10304号
事件の種類:審決取消訴訟(サポート要件・実施可能要件違反の無効請求→請求棄却→審決取消) 事件の論点:用途発明のサポート要件違反
本件発明の名称:樹脂配合用酸素吸収剤及びその組成物
〔本件発明の内容〕
「還元性鉄と酸化促進剤とを含有し且つ鉄に対する銅の含有量が150ppm以下及び硫黄の含有量が500ppm以下であることを特徴とする樹脂配合用酸素吸収剤。」(請求の範囲)
〔裁判所の判断〕
(イ)特許請求の範囲の記載が特許法36条5項1号に定めるサポート要件に適合するものであるか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明に、当業者において、特許請求の範囲に記載された発明の課題が解決されるものと認識し得る程度の記載ないし示唆があるか否か、又は、その程度の記載や示唆がなくても、特許出願時の技術常識に照らし、当業者において、当該課題が解決されるものと認識し得るか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。
(ロ)そこで、以下、上記観点に立ち、本件発明の酸素吸収剤を適用する樹脂一般について、発明の詳細な説明に、当業者において、本件発明の課題が解決されるものと認識し得る程度の記載ないし示唆があるか否か、また、本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者において、当該課題が解決されるものと認識し得るか否かについて検討する。
(i)本件発明が解決すべき課題
本件発明が解決すべき課題は、酸素吸収剤を樹脂に適用した際の樹脂のゲル化及び分解並びに異味・異臭成分の発生(本件課題)であるということができる。
(ii)発明の詳細な説明の記載等
本件発明の酸素吸収剤を適用する樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体である場合はともかく、その余の樹脂一般である場合についてまで、発明の詳細な説明に、当業者において本件課題が解決されるものと認識し得る程度の記載ないし示唆があるということはできず、また、本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者において本件課題が解決されるものと認識し得るということもできないといわざるを得ない。
以上によると、本件発明に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすものと認めることは到底できないというべきである。
→用途発明の実施可能要件のケーススタディ1
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留意点 |
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