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 パテントに関する専門用語
  

 No:  800   

用途発明の実施可能要件C1/特許出願/進歩性審査基準/

 
体系 特許申請及びこれに付随する手続
用語

用途発明の実施可能要件のケーススタディ1

意味  用途発明とは、或る物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見い出すことに基づく発明をいいます(進歩性審査基準)。ここでは用途発明の特許出願が満たすべきサポート要件についてケーススタディします。


内容 〔事例1〕

事件番号:平成20年(行ケ)第10304号
事件の種類:審決取消訴訟(サポート要件・実施可能要件違反の無効請求→請求棄却→審決取消)
事件の論点:用途発明の実施可能要件違反
本件発明の名称:樹脂配合用酸素吸収剤及びその組成物

〔本件発明の内容〕

 「還元性鉄と酸化促進剤とを含有し且つ鉄に対する銅の含有量が150ppm以下及び硫黄の含有量が500ppm以下であることを特徴とする樹脂配合用酸素吸収剤。」(請求の範囲)

〔裁判所の判断〕

(a)(旧)特許法36条4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。」と定めるところ、本件発明のように、特定の用途(樹脂配合用)に使用される組成物であって、一定の組成割合を有する公知の物質から成るものに係る発明においては、一般に、当該組成物を構成する物質の名称及びその組成割合が示されたとしても、それのみによっては、当業者が当該用途の有用性を予測することは困難であり、当該組成物を当該用途に容易に実施することができないから、そのような発明について実施可能要件を満たすといい得るには、発明の詳細な説明に、当該用途の有用性を裏付ける程度に当該発明の目的、構成及び効果が記載されていることを要すると解するのが相当である。

(b)発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明が所期する作用効果は、酸素吸収剤を樹脂に適用した際の樹脂のゲル化及び分解並びに異味・異臭成分の発生を抑制すること(以下「本件作用効果」という。)であると認められる。(中略)

(b)発明の詳細な説明には、本件発明の酸素吸収剤を適用するのに特に好適な樹脂(エチレン−ビニルアルコール共重合体を除く。)の例として一定の数のアミド基を有するポリアミド類が、本件発明の酸素吸収剤を適用することができるその他の樹脂の例としてオレフィン系樹脂等がそれぞれ記載されているのであって、それにもかかわらず、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂(酸素吸収剤の適用の対象となるもの。以下同じ。)については、本件発明が本件作用効果を奏するものと確認された旨の直接の記載は一切存在しないのである。

(c)そこで、発明の詳細な説明に、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂一般について、本件発明が本件作用効果を奏することを裏付ける程度の記載がされているといえるか否かについてみると、発明の詳細な説明には、

(中略)

・本件発明は、相違点に係る構成を採用した場合(特に、銅及び硫黄の含有量をそれぞれ100ppm以下及び250ppm以下とした場合)に本件作用効果を奏するとの知見に基づくものである旨の記載、(中略)

・相違点に係る本件発明の構成を採用することにより本件作用効果を奏するとの事実は、多数の実験の結果から現象として見出されたものであって、その十分な理論的根拠は明らかでない旨の記載、(中略)

・酸素吸収剤を配合した樹脂組成物におけるゲル化及び分解は、すべて高分子ラジカルの発生によるものと認められ、樹脂中に配合された還元性金属は、程度の差はあるものの、混練条件下で高分子ラジカルを発生する傾向があるところ、還元性金属と本件上限値を超える銅を含有する酸素吸収剤においては、本件発明の酸素吸収剤と比較して、高分子ラジカルの発生がはるかに多くなるものと認められることが上記理論的根拠であると推定される旨の記載、

 などが記載されているが、(中略)

 当業者において、これらの記載の内容が、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂一般についても、そのまま妥当するものと容易に理解することができるとみることはできない。

(d)さらに、発明の詳細な説明には、当業者において、銅及び硫黄が過大に存在することによる樹脂のゲル化及び分解並びに異味・異臭成分の発生を考える上で、エチレン−ビニルアルコール共重合体とそれ以外の樹脂一般とを同視し得るものと容易に理解することができるような記載は全くない。

(e)以上からすると、発明の詳細な説明に、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外の樹脂一般について、本件発明が本件作用効果を奏することを裏付ける程度の記載がされているものと認めることはできず、その他、そのように認めるに足りる証拠はない。
用途発明のサポート要件のケーススタディ1


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