内容 |
①自由心証主義の意義
(a)裁判では、事実の認定は証拠に基づかなければなりません。
(b)どういう事柄を証拠として採用するべきという点に関して、かつては法定証拠主義という考え方がありました。これは、裁判官の恣意的な証拠の採用を防ぐために、一定の証拠(例えば複数の証言)があれば法律上定められた事実を認めなければならない、というルールを作り、それに従って事実認定をするという考え方です。
(c)特許の分野で仮想の事例をあげると、“公知”・“公用”の事実に基づいて特許出願人の発明の新規性や進歩性を判断する場合、人の記憶は書面に比べて曖昧であるから、ある技術が公知・公用である旨の証人が二人以上いるときに限って新規性を喪失したものと認めようというルールを作るようなものです。
しかしながら、複数の証人がいても各々の記憶が曖昧な場合もあれば、一人の証人だけでも細部まで記憶が明瞭である場合もあります。従って証拠の評価に関するルールを一律に事案に当てはめるというのはうまくいかないことが多いのです。
(d)そこで裁判官の能力を信用して、事実認定及び証拠の評価を裁判の自由な心証に委ねることにしました。
②自由心証主義の内容
(a)民事訴訟法第247条では、「裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。」とされています。
(b)自由心証主義の下では、証拠方法の証拠力の評価は裁判官の心証に委ねられますが(→証明力とは)、これは好きなように評価してよい、という意味ではありません。
ある程度の倫理則や経験則に従う必要があります。
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