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804 証明力/特許出願/進歩性特許侵害/ |
体系 |
実体法 |
用語 |
証明力 |
意味 |
証明力とは、証拠が裁判官の心証に及ぼす力という意味です。民事訴訟では証拠力ともいいます。
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内容 |
@証明力の意義
(a)裁判では、事実の認定は証拠に基づかなければなりません。民事訴訟法では、刑事訴訟法における証拠裁判主義のような言葉はありませんが、あまりにも当然のことだからです。
(b)裁判所に提出される証拠の価値はどれも同じとは限らず、或る証拠で一つの事実がほぼ確実に存在した認定できる場合もあります。その反面、一つの証拠では、或る事実があったらしいと推測できるに留まり、事実認定には足りないとされることもあります。
(c)裁判官にある事実が存在したと納得させることができる証拠の力を、証明力といいます。
(d)なお、裁判官が証拠を取り調べる以前の問題として法律により特定のものを証拠として扱うのを禁止されている場合があり、こうしたものは証拠能力がないといいます(→証拠能力とは)。証明力は証拠能力とは別の概念です。
A証明力の内容
(a)特許侵害の事実があったか否かを証明するのも大変ですが、法律的には、特許出願人の発明が進歩性を有するものであったか否か、すなわち、特許出願時に“容易に”発明できたのかを、証拠により事実認定することが難しい問題です。進歩性の規定の「容易に」という要件は、抽象的な評価に関する規範的要件であり、特許侵害の要件のように“実施をしたか否か”のように白黒をつけにくいからです。
→規範的要件とは
(b)一般に特許出願の進歩性の有無は、特許出願の日前に頒布された刊行物等により判断しますが、特許出願の日後に頒布された刊行物が進歩性の証拠にならないわけではありません。これは要するに証明力の問題だからです。
→進歩性の時期的基準のケーススタディ1
(c)ある事実(例えば新規性や進歩性の判断の基礎となる公知事実)の書証に関して、その成立に疑義があると当事者が主張しても、それをどう判断するのかは裁判官の心証次第です。
→証明力のケーススタディ(肯定的に評価された例)
(d)また進歩性の判断では、さまざまな要素、米国特許出願の実務で2次的考察と呼ばれる、商業的成功や長期間の不実施も考慮される可能性がありますが(→2次的考察とは)、証拠としての価値はケースバイケースであり、これらの証拠が必ずしも証明力を認められるとは限りません。
→証明力のケーススタディ2(否定的に評価された例)
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留意点 |
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