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 パテントに関する専門用語
  

 No:  820   

寄与率/特許出願/特許侵害

 
体系 権利内容
用語

寄与率のケーススタディ1(特許侵害)

意味  特許侵害における寄与率とは、特許の対象である発明が製品の価値に対して貢献した程度を示す割合をいいます。


内容 @寄与率の意義

(a)特許侵害における寄与率は、主に係争物の一部を発明品である場合に発明の貢献度に応じて損害額を下げるために用いられる概念です。

(b)そして全体に占める一部の貢献度の割合を計算するといっても、全体品の原料費に対する一部の原料費の割合を考えるのか、重さや容量の比率で考えるのかで、結果が大きく違ってきます。

 ここで紹介するのは、権利対象がコンニャクであり、係争物がコンニャク入りサラダである事例です。製品としてはコンニャクが必須の要素ですが、材料費中にコンニャクが占める割合が低いため、寄与率の大きさが問題となりました。

A事例1

事件番号:平13(ワ)3381号 ・ 平11(ワ)12586号
事件の種類:特許権・実用新案権侵害差止等請求事件
発明の名称:表面筋状薄肉こんにゃく/筋組織状こんにゃくの製造方法

〔請求項〕

(A)個々に独立した多数個のノズルが1〜2列に連設された押出ノズルから、

(B)太さ3mm以下に押出された糸状こんにゃくを即横幅方向へ一体化して、

(C)長手方向に多数の凹条(2) と凸条(3) を表面に有し、

(D)凸条(3) 部分の厚肉部が3mm以下であって、凹条(2) 部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる

(E)表面筋状薄肉こんにゃく。

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〔事件の概要〕

(a)件では、特許発明は「こんにゃく」であるのに対し、イ号物品はこんにゃくを含む「サラダ製品」である。

(b)裁判所は、サラダ製品においてこんにゃくが占める寄与率を40%とし、実施料率を5%とし、売上×寄与率40%×実施料率5%という計算式でもって、損害賠償額を算出している。

〔寄与率について〕

(a)被告らは、こんにゃくの原料費の価格が商品価値に占める割合は極めて低いと主張する。

(b)そして、乙77の1〜3によれば、被告やまとにおけるこんにゃくの原料費と、その他の海藻とドレッシング(たれ)及び外袋(こんにゃくと海藻とドレッシングの組合せをセットとして販売するための袋)の費用を比較すると、次のとおりであることが認められる。

(ア) 「いきいきサラダ」

 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円

 b その他の費用(合計:44円〜51.5円)

   海藻:23円〜29.5円、たれ:15円〜16円、外袋:6円

(イ) 「蒟蒻海藻サラダ」

 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円

 b その他の費用(合計:50円)

   海藻:29.5円、たれ:13.5円、外袋:7円

(ウ) 「海藻サラダ」

 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円

 b その他の費用(合計:65.28円)

   海藻:29.5円、たれ:13.5円、外袋:22.28円

(c)しかしながら、これらの商品においては、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素であることが強調されているといえる。

・「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」、「蒟蒻海藻サラダ」は、いずれも海藻、こんにゃく及びドレッシングから成る商品である。

・包装体の表面には、同商品名が記載されるとともに、海藻やレタス等の野菜の上にこんにゃくが乗った写真が掲載されている。

・包装体の裏面には、「食物繊維とミネラルが豊富です。陸のヘルシーと海のヘルシーが、おいしく出会いました。」、「ミネラルが豊富に含まれる海藻と、食物繊維たっぷりの蒟蒻が、おいしく出会いました。」、「こんにゃくと海藻のヘルシー最強コンビ」と記載されている。

(d)「海藻サラダ」は、海藻、こんにゃく及びドレッシングから成る商品で、その包装体は透明であって、包装体の外側から内容物のかなりの部分をこんにゃくが占めることが分かる。

(e)また、包装体に貼られたラベルには、同商品名と、その下に「海藻はお水で5分間ひたしてください」「生食用こんにゃく そのまま生で食べられます」との記載があり、海藻やレタス等の野菜の上にこんにゃくが乗った写真が掲載されていることが認められ、この「海藻サラダ」についても、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素であることが強調されているといえる。

(f)被告サラダ製品のこんにゃくは、ドレッシングをかけてサラダとして食べるものであることから、ドレッシングが良くからむ必要があるというべきところ、本件発明は、多数本の糸状こんにゃくを各糸状こんにゃくが接触する部分でのみ接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良された筋組織状こんにゃくを得る製造装置に関するものであって、本件発明に係る製造方法・装置は、製造されるこんにゃくの形状をサラダ用に適したものにしているというべきであり、イ号方法・装置も同様の機能を果たしているといえる。

(g)そうすると、上記こんにゃくの原料費や、海藻、たれ及び外袋の費用額(ただし、この費用額には被告日本食研の利益が含まれていることを考慮すべきである。)のほか、被告サラダ製品は、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素とされていること、イ号方法・装置を使用することによって製造されるこんにゃくの形状がサラダ用に適したものになっているといえることからすると、被告サラダ製品において、被告こんにゃくが占める寄与率は、40%とするのが相当である。

〔コメント〕

 前述の通り、権利の対象をどのように選ぶかが寄与率に関係します。

特許を受けようとする発明の特許出願人の自由ですが、可能であれば特許出願後の市場の動向(競合者の実施形態)も考慮して特許の活用がし易い形で特許出願のクレームを補正することも有利な対応であると考えます。


留意点

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