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①権利根拠規定の意義
(a)立証責任の分配原則の通説(法律要件分類説)では、法規を3つの類型に分けて立証責任を分配していきます。 →法律要件分類説とは
(b)権利根拠規定は、3つの類型の一つです。
(イ)特許法でいえば、特許法第29条第1項本文(産業上利用可能な発明をした者は、特許を受ける権利を有する)は権利根拠条文です。
(ロ)これに対して、発明の新規性を規定した同項各号(1号…特許出願前に日本国内・外国で公然知られた発明、2号…特許出願前に日本国内・外国で公然実施された発明、3号…特許出願前に日本国内又は外国で頒布された刊行物に記載された発明等)や進歩性を規定した第29条第2項は、権利障害規定と言われます。
(c)権利根拠規定では、権利の発生を主張する者が、構成要件に該当する事実の証明責任を負います。
(イ)品物を売ったが買主が代金を支払ってくれないので売主が買主を訴えるという場合(売買代金の支払請求訴訟)には、原告(売主)側が、売買契約の締結・商品の引渡し・代金支払期限が経過していることを証明します。
(ロ)代金を支払っていないことの事実認定はどうするのかというと、被告(買主)が既に代金を支払っているので請求権は存在しないという言い分(抗弁)を主張する場合に、支払いの事実を立証する義務を負います。一般に売主が代金を受け取っていない旨を証明することは困難だからです。
→権利消滅規定
②権利根拠規定の内容
(a)例えば特許要件(新規性・進歩性等の欠如)を理由として無効審判を請求する場合には、当該の請求の直接の根拠は、特許法第123条第1項(特許が次の各号のいずれかに該当するときには、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる)ですが、同項の規定の構造に着目して、全ての無効理由について立証責任が分配されるのではありません。
一般に、特許法第123条第一項各号は“無効理由の一覧表”に過ぎず、立証責任の分配をどうするのかは、前述の新規性・進歩性などの個々の条文の性格に応じて判断するべきであると解釈されています。
(b)特許侵害事件で差止請求権を行使するときには、特許法第100条の「特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して損害賠償を請求できる」が根拠となります。
“自己の特許権を侵害する”という条件の具体的内容として、特許法第68条本文(特許権者は業として特許発明の実施をする権利を専有する)も権利の根拠となります。
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