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@権利消滅規定の意義
(a)立証責任の分配原則の通説(法律要件分類説)では、法規を3つの類型に分けて立証責任を分配していきます。 →法律要件分類説とは
(b)3つの類型とは、権利根拠規定・権利消滅規定・権利障害規定です。
(c)例えば債権の消滅時効を定めた民法第167条第1項の「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」の規定などが権利消滅規定に該当します。
(d)前述の法律要件分配説によれば、権利消滅規定の立証責任は、権利の消滅を主張する者が、構成要件に該当する事実の証明責任を負います。
売買代金の支払請求訴訟の例では、買主(被告)が当該事実を立証して錯誤による売買契約の無効(民法第95条本文)の抗弁を試みる訳ですが、これに対して売主(原告)の側も、錯誤に関して買主の重過失(民法第95条但書)の再抗弁をしてくることが考えられます。重過失の事実があったことは原告が証明責任を負います。
A権利消滅規定の内容
(a)特許法の場合、特許権は、遡及的消滅事由として次のものがあります。
(イ)特許無効審決
発明の新規性・進歩性などの特許要件を具備しない特許出願に対して特許されたときには、特許無効審決の確定により、当該特許権ははじめからなかったものとみなされます(特許法第125条)。最初から存在すべきでない権利だからです。
但し後発的な無効理由に関しては、当該事由に至ったときから消滅します。
(ハ)特許取消決定の確定
特許異議申立に対して特許取消の決定が確定したときも特許権ははじめからなかったものとみなされます(特許法第114条3項)。
(b)特許権が遡及的に消滅することにより、一旦発生していた差止請求権や損害賠償請求権も消滅します。
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