内容 |
@無効調査における実施例の意義
(a)特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により決定されますので、無効調査の範囲も当然に特許請求の範囲に基づくべきですが、それと同時に調査対象の特許の実施例を検討することも重要です。
(b)何故ならば特許出願人が明細書を作成する場合には、通常、発明のコアである実施例が決まっており、それをさまざまな工夫をして上位概念化し、請求の範囲に記載します。
従って、実施例が具体的・実質的なものであるとすれば、請求の範囲に記載された発明は特許出願人の認識に左右される抽象的なものです。
従って特許請求の範囲のみに気をとられると、発明の実体を見失うおそれがあります。
A無効調査における実施例の検討の内容
(a)具体的には、請求の範囲の発明をA、実施例をaとすると、発明Aが記載されているばかりでなく、発明の中心であるaにも言及した先行技術を調査するのがベストです。
そうしないと訂正請求をすることで特許権が生き残る可能性があるからです。特許権の行使を免れるために無効審判を請求するので、その目的が達成できないときには審判を請求する意味がありません。
(b)特に化学の分野では、実施例レベルで相手の創作と同じものを探すことが重要になります。
(c)相手の特許発明が数値限定(例えば50〜60%)を含む場合、その範囲に含まれる実施例(例えば55%)が特許出願前に頒布されていた刊行物に記載されているのを見つけると、無効審判の成功率が高まります。これに対して相手の数値範囲を含むような数値範囲(例えば40〜70%)の記載を見つけてもあまり意味がありません。
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