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@拘束力の意義
日本では行政機関は終審としての行政裁判を行うことができず、行政処分に関しては裁判所の判断を仰ぐ途が開かれています。
しかしながら、裁判所が行政機関の処分を取り消した後に、行政機関が全く同じ処分をすると、裁判所と行政機関との間をその事案が行ったり来たりを繰り返すことになり、問題が何時まで経っても解決しません。
そこで行政事件訴訟法第33条第1項は、「処分又は判決を取り消す判決は、その事件について、処分又は判決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と規定されています。
A拘束力の内容
(a)例えば特許庁が或る特許出願に関して引用例Aに基づいて進歩性を否定して拒絶審決を出し、裁判所がその審決を取り消したとします。
その取消決定は、審判官を拘束しますが、審判官が進歩性とは別の理由(例えば先願主義違反)で当該特許出願に対して再び拒絶審決を出すことは構いません。
なぜなら、拘束力は、行政処分の個々の違法原因に関して生ずるものに過ぎないからです。
(b)また同じ進歩性の欠如を理由とする場合であっても、別の引用例Bに基づいて進歩性を否定して再び拒絶審決を出すことは構いません。
(c)他方、同じ引用例の同じ引用箇所を用いて、論理の組み立て方を変えるのは拘束力に反する可能性があります。
例えば第一次審決で、引用例に△△が記載されている旨の認定しており、
取消審決で“引用例に△△が記載されている”とは認めることができないと判断され、
第二次審決では“引用例は△△が記載されていないが、結局、所用の作用効果を実現するには、△△の方法か或いは□□の方法かのいずれしかなく、特許出願時の常識を参酌すればその一方である△△を選択するのは当業者にとって容易である。”とする如くです。
→拘束力のケーススタディ
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