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@不可争力の意義
(a)行政行為は、行政庁が国民の権利・義務に関して一方的に決定する行為ですから、当該決定が当事者にとって納得できないものである可能性があります。従って行政処分に対して当事者が不服を申し立てる途を担保しておき、不服申立の理由に正当性があれば行政機関が当該処分を取り消すことができるようにしておく必要があります。
(b)しかしながら、いつまでも不服申立が可能であり、行政処分が覆される可能性があるとすれば、当事者は安心して行政行為により得られた権利を行使することができず、法的安定性を損ないます。
(c)そうした観点から、前述の不服申立てには条文上で一定の制限が課されるのが通常です。こうした条文上の規定に根拠を置き、一旦有効に成立した行政行為に対して一定の期間が経過した後に当事者が争うことを制限する効力が不可争力です。
“一旦有効に成立した”という限定をしたのは、無効の行政行為に関して裁判所で争うときには期間の定めがないのが通常だからです。
(d)不可争力と類似の概念として不可変更力がありますが、前者は私人(当事者)が行政行為の変更を求めて裁判で争うことを制限するものであるのに対して、後者は行政行為を行った行政庁が自ら行政行為を変更することを制限する概念です。
→不可変更力とは
A不可争力の内容
(a)例えば特許出願の拒絶査定に対する不服(例えば進歩性があるのにないものとして判断された)が特許出願人にあり、その不服が正当なものであっても、拒絶査定不服審判の請求期間を経過した後には、拒絶査定に対して争うことはできません。
特許出願に対して拒絶査定が確定することにより、特許出願に係る発明が権利化されるおそれがなくなったと判断して、当該発明の実施を試みる企業がいる可能性があり、拒絶査定の不可争力を認めないと、こうした企業の利益を害するからです。
(b)同様に特許出願の却下の決定などに対しても所定の期間を経過した後には、特許出願人が当該決定を争うことはできなくなります。
→不可争力のケーススタディ
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