内容 |
事例1
[事件番号]昭和44年(行ケ)第58号
[事件の種類]審決取消訴訟(特許出願の拒絶審決に対する)
[事案の内容]
特許出願の拒絶審決が出された後に特許出願が取り下げられた事例
[原告(特許出願人)の主張]
原告は、昭和三十六年十一月二十一日、名称を「緩衝体」とする発明につき特許出願したところ、昭和三十八年一月二十五日拒絶査定を受けたので、同年三月七日審判を請求し、昭和三八年審判第一〇九七号事件として審理されたが、特許庁は昭和四十四年四月二十一日「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決をし、その謄本は同年五月十四日原告に送達された。
二 本件審決を取り消すべき事由
原告は、本件審決の後であり、その確定前である昭和四十四年四月二十二日本件特許出願を取り下げた。したがつて、本件審決は、存在しなくなつた出願を対象としてなされたものに帰するから、違法として取り消されるべきである。
[被告(特許庁)の主張]
被告指定代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
本件の特許庁における手続の経緯が原告主張のとおりであること、原告が昭和四十四年四月二十二日本件特許出願を取り下げたことは認めるが、その余の原告の主張は争う。本件審決は適法になされたものであり、原告主張のような違法はない。
[裁判所の判断]
(主文)
原告の訴は、却下する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
(理由)
本件の特許庁における手続の経緯が原告主張のとおりであることおよび原告が昭和四十四年四月二十二日本件特許出願を取り下げたことは当事者間に争いがない。そして、特許出願は、拒絶査定が確定するまでまたは特許権の設定の登録がされるまで、これを取り下げることができると解すべきであり、また、特許出願が取り下げられたときは、その出願は初めからなかつたものとみなすべきであるから(特許法第三十九条第五項、第五十二条第五項はその一例を示したものと解すべきである。)、本件審決は、原告の右出願の取り下げにより、その効力を失つたことが明らかである。そうであるとすれば、原告の本件訴は、既に効力を失つた審決の取消を求めることに帰するから、法律上の利益を欠くものとして却下を免れない。
よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。
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