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①専属管轄の意義
法定管轄のうちで特に高度の公益的な要請により特定の裁判所だけに裁判権を行使させようとすることがあります。こうした趣旨による管轄を専属管轄と言います。
専属管轄は、任意管轄に対する用語です(→任意管轄とは)。
例えば特許権等に関する訴え(特許権・実用新案権・回路配置利用権・プログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴えを言う)では、日本を東西に2区分し、本来、東京・名古屋・仙台・札幌の各高等裁判所に管轄権がある場合は、その訴えは東京地方裁判所の管轄に専属し、西側の大阪・広島・福岡・高松の各高等裁判所に管轄権がある場合は、その訴えは大阪地方裁判所の管轄に専属することになります(民事訴訟法6条1項)。
これは、特許侵害などの専門性に鑑みて、その訴えを、専門的処理体制の整った東京地方裁判所と大阪地方裁判所に集中することにより、審理の一層の充実及び迅速化を図る趣旨です。
専属管轄が定められているときには、当事者間の合意に基づいて管轄を変更すること(→管轄の合意)はできず、管轄違いの訴えに対して被告が異議なしで応訴すること(→応訴判決)も認められません。
②専属管轄の内容
特許出願の拒絶審決、訂正審判の請求が認められない旨の審決、特許無効審判・特許権存続期間の延長登録無効審判の審決(容認・否認とも)に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄となります(特許法第178条)。
これは特許出願の拒絶審決などは、特許請求の範囲の解釈など技術的専門的知識が必要とされるため、技術的専門官庁たる特許庁の判断を尊重して地方裁判所の審理を省略する趣旨です。
特許出願の審決等が確定したとき再審の審決についても同様です。
東京高等裁判所は、支所として知財高等裁判所を設けて、さらに高度の専門的内容を含む特許出願・特許明細書を扱う事案に円滑に対応できるようにしています(→知財高等裁判所とは)。
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