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①効力規定の意義
(a)効力規定は、主に公法(国家と私人との関係を規定した法律)で用いられる言葉です。
(b)行政上で所定の行為を取り締まるときには、例えば罰則を科することにより取締の目的を十分に達成できる場合にケースと、罰則を科するだけでは足りず、取締に反する行為を無効にするべき場合とがあります。
前者の場合には、取り締まり規定が適用されます。交通規則違反に対して罰則を科する規定の如くです。 →取り締まり規定とは
後者の場合には、効力規定が適用されます。
(c)効力規定及び取り締まり規定は、ともに対象となる行為を禁止する規定であり、これに対して、単なる訓示的意味合いに留まるものとして訓示規定があります。
→訓示規定とは
②効力規定の内容
(a)審査官は、特許出願に拒絶理由が存在しており、拒絶の査定をしようとするときには、予め特許出願人に対して拒絶理由通知を行う必要があります(特許法第50条)。
拒絶理由通知を出さずに特許出願について拒絶査定をすることは違法ですが、それにより直ちに拒絶査定が無効になる訳ではありません。
拒絶査定を覆すためには、特許出願人は拒絶査定不服審判を請求しなければならず、かつこの審判を請求しても、拒絶理由通知をしなかった事実を以て直ちに拒絶査定が覆されるわけではありません。前記審判は特許出願の審査と続審関係にあり、原査定の結論が誤っているときに査定が覆るのです。
→続審主義とは
従って特許法第50条は効力規定ではありません。
(b)特許・実用新案・意匠・商標の四法において「効力規定」という用語が使用される頻度は多くありません。
参考のために所定の規定が効力規定か否かが争われた事例を挙げます。
(c)一つの例は特許法133条1項(補正命令)の規定です。
昭和52年(行ケ)第188号では、商標登録無効審判において、無効審判の請求書に理由が記載されていなかったために、不適法な請求として却下するべきところ、請求を不適法と却下したところ、請求人がこれを不服として審決取消訴訟を提起したものです。
当事者は、「商標法五六条一項で準用する特許法一三三条一項は、『審判長は、請求書が第一三一条第一項又は第三項の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。』と規定しているが、これは効力規定と解すべきである。したがつて、本件においては、審判長は、本件審判請求書につき右規定にもとづき、原告に対し相当の期間を指定して請求の理由の補正を命じなければならなかつたはずである。しかるに特許庁はそのような手続を怠り、特許法一三五条にもとづき、本件審判請求を審決により却下した。したがつて本件審決は違法であるから取消されるべきである。」
裁判所は、原告の訴えを認めて、審決を取り消しました。
この事例では、無効審判が請求されたケースですが、特許出願等の拒絶査定に対する不服審判でも、補正が可能な事例に関しては補正の機会をあたえなければなりません。
もっとも、上記のケースは現行の特許法の下で争われていたら、原告の主張は認められなかったものと考えられます。現行法の下では請求の理由を含めて請求書の補正の制限が厳しくなっているからです。
“第一三一条の二 前条第一項の規定により提出した請求書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、当該補正が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 特許無効審判以外の審判を請求する場合における前条第一項第三号に掲げる請求の理由についてされるとき。”
(d)この他に、特許法第156条第1項(審判長は、事件が人血をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。)が効力規定かどうかが争われた事例がありますが、裁判所の判断は、これは訓示規定にすぎないというものでした。
→訓示規定とは
(e)同じように「しなければならない」であっても場合により効力規定になったり、訓示規定になったりすることが判ります。
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