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①追加判決の意義
(a)民事訴訟において、裁判所が終局判決をするに当たり誤って請求の一部のつき判決を脱漏した場合には、裁判所は、申立または職権で、脱漏部分について判決をしなければなりません。この判決を追加判決といい、これに対して先にした判決を前判決といいます。
(b)脱漏部分についてはなお裁判所に係属し、裁判所は改めて申立または職権で追加判決をしなければなりません。
(c)追加判決も、それが出されると、前判決とは別個の独立した終局判決となります。従って追加判決も、前判決と同様に、控訴の対象となり、或いは確定します。
→終局判決とは
(d)前判決に対する追加判決に類似する概念として、一部判決に対する残部判決があります。これは判断の遺脱ではなく、事件の性質上止むを得ない場合に行われます。
→残部判決とは
②追加判決の内容
(a)追加判決の実例として、昭61(オ)31号 ・
昭61(オ)30号/「アースベルト」事件の下級審を挙げます。
(イ)昭和54年(ワ)第350号
主位的請求…不正競争防止法第1条第1項第1号による差止め→棄却
予備的請求1…意匠権に基づく被告製品の差止め→棄却
(ロ)昭和56(ネ)第5号・昭和59年3月16日(控訴審)
主位的請求原因…不正競争防止法第1条第1項第1号による差止め→棄却
第2次請求原因…民法第709条の不正行為による損害賠償請求
第3次予備的請求…実用新案権に基づく差止請求・損害賠償請求(旧実用新案法第13条の3に基づく補償金請求権の請求?)→差止請求は容認。補償金請求権に関して判断遺脱。
裁判所は、“次に、損害賠償請求について判断する。出願公開の効果として認められるのは実施料相当の補償金請求権であり、損害賠償請求権は、出願公告の効果として認められるものである。被控訴人らはその製品の製造販売について損害賠償責任を負うことになるが、この点に関して控訴人らは何ら主張立証をしていないから、この点の損害賠償請求は失当である。”と判示した。
(ハ)昭和56(ネ)第5号・昭和60年9月30日(控訴審)
予備的請求…旧実用新案法第13条の3に基づく補償金請求権の請求→棄却
(b)実用新案登録出願に基づく補償金請求権の行使と言うと、奇異に感じるかもしれませんが、この時代には、実用新案登録出願についても特許出願と同様に実体審査が行われており、出願公開がされた後に出願の対象を実施した第三者に対しては、特許出願人が一定条件下で補償金請求権を請求できるのと同様に、実用新案登録出願人も当該権利を請求できました。
(c)本件では、当事者(控訴人)が“実用新案権に基づく差止請求、損害賠償請求を求める。この損害請求は、実用新案法第13条の3(補償金請求権の規定)に基づき、本考案が出願公開された後の被控訴人らの模造品の製造販売に係るものであり…”と言っているので、そもそもの混乱の原因は控訴人が“補償金の請求”というべきところを“損害賠償請求”と言ってしまった点にあります。裁判所としては、“損害賠償の請求というが、出願公告後の製品の損害賠償に関して、控訴人は何ら主張も立証もしていない。”と返したわけであり、必ずしも判断遺脱とは言えない、という考え方もできます。しかしながら、そこは控訴人の真意を読み取るべきであろうということで、昭和59年3月16日の前判決の後に追加判決に昭和60年9月30日の追加判決に至りました。
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