内容 |
①時効の意義
(a)時効には、民事上の時効と刑事上の時効とがありますが、ここでは主として前者について説明します。
(b)一般に、ある事実関係が永続的に続くと、その事実関係を基礎とした状態に対して世間の人間の信頼を生じます。こうした信頼を保護するためには、その事実状態を権利関係として認めることが得策と考えられます。こうした要請に応えるのが、時効の制度です。
(c)現在の事実状態は、法律上の根拠を有するものか否かを問わずに、権利として保護されます。
(d)時効の態様として次のものがあります。
(イ)取得時効
取得時効とは、他人の物又は財産権を一定期間継続して占有又は準占有する者にその権利を与える制度です(→取得時効とは)。
(ロ)消滅時効
消滅時効とは、一定行使されない場合、権利を消滅させる制度です(→消滅時効とは)。
消滅時効に類似する概念として除斥期間がありますが、無効審判の除斥期間は廃止されています。各国間の情報手段の整備により、特許出願人は各国の刊行物を比較的容易に入手できるからです。
(e)時効の完成に必要な期間を、時効期間と言います。
時効期間は、一般の債権に関しては10年、債権又は所有権以外の財産権に関しては20年ですが(民法167条)、例外的に短期時効が規定されることがあります。
例えば不当行為に基づく損害賠償請求権に関しては、“損害及び加害者を知った時から3年”です。
(f)時効は一定の条件の下で中断します。 →時効の中断とは
②時効の内容
(a)特許侵害訴訟において、不法行為による損害賠償請求の時効期間は、特許権者(又は専用実施権者)が“損害及び加害者を知った時から3年”ですが、“損害を知った時”とは何を言うのかを注意するべきであります。
平成25年(ワ)第33070号では、侵害が継続的に行われた一定期間の途中のある時点で特許権者が被告の侵害行為を認識したときに、その時点から3年間の経過により、一連の侵害行為に関して時効の完成が認められるかどうかが争われました。
裁判所の判断は、時効は完成しないというものでした。
何故なら、たとえ或る時点での侵害を知ったことが明らかであり、その後が実施行為が続いたとしても、後の実施行為が特許発明の技術的範囲に属するものかどうかが必ずしもわからないからです。
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