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997 独占実施料/特許出願/オープンイノベーション/進歩性 |
体系 |
ビジネス用語 |
用語 |
独占実施料 |
意味 |
独占実施料とは、特許権・実用新案権・意匠権その他知的財産に関する権利(以下「特許権等」という)が共有に係る場合であって、一の共有者が権利対象を独占的に実施するときに、共有者間の特約に基づいて、他の共有者が一の共有者に請求される金銭です。
この用語は、一部の大学や研究機関において使用されているだけであり、世間に広く知れ渡っているとまでは言えませんが、産学連携やオープンイノベーションに関連するキーワードとして今後重要になってくる可能性があるために、ここで解説します。
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内容 |
@独占実施料の意義
(a)需要者の嗜好の変化や世間の動向に素早く対応して技術開発を行い、権利化の手続(特許出願など)に繋げていくために、自社が抱える技術的課題の解決に役立つ技術の保有者を世界中から募り、共同開発をする手法(オープンイノベーション)が必要となっています。
大学や研究機関は、企業のパートナーの候補として重要です。
(b)しかしながら、共同開発の成果である発明についての特許を受ける権利は発明者の共有となり、“特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ特許出願をすることができない。”(特許法第38条)ので、それぞれの発明者から特許を受ける権利の持分を承継した大学及び企業は、共同で特許出願し、進歩性などの審査を経て権利化されたときには、特許権の共有者となることになります。
(c)この場合、大学や研究機関は通常自ら特許発明をする能力を有さず、或いは法律で自ら実施をして利潤を上げることを規制されているため、また、第三者に実施許諾してライセンス料を得ようとしても、他の共有者の同意を得なければ実施許諾などができないとされているため(特許法第73条第3項)、企業に比べて不利になり易いと指摘されています。
(d)従来、大学や研究機関は、特許出願を前提とする共同開発に入る際に、企業が実施により得た利益の一部を自らに還元することを内容とする不実施補償契約を締結することを求めることがよくありました(→不実施補償契約とは)。
しかしながら、前記契約は、企業の実施が独占的状態での実施であるか、非独占的状態での実施であるかに関わらず、実施の利益を大学・企業に還元するものであるため、業種においては、企業側から強い反発がありました。
(d)こうした理由から導入されたのが、独占的実施料です。
A独占実施料の内容
(a)独占実施料は、法律的に保証されたものではなく、私人間の特約により認められるものです。
特許法には、“特許権の共有者は、契約で別段の定めをしない限り、特許発明を実施することができる。”(同法第73条第2項)と規定されているだけです。
しかし、“別段の定めをしない限り”という文言は、この規定が任意規定であることを示しています。そうだとすれば、契約自由の原則から、独占実施料を各共有者の実施に他の共有者の同意を要する旨の特約の代わりに、“一方の共有者が独占的状態で実施をしたときには、当該共有者は他方の共有者に対して所定の実施料を支払う。”という特約を当事者間で結ぶことも自由であると考えられます。
大切なことは、少なくとも共同で特許出願をする前、好ましくは、共同開発に入る前に、そうした約束事を書面にしておくことです。
(b)「独占的状態で」実施するとは、特許権等を有する者が、他に権利対象を実施し得る者が存在しない状況の下で、当該権利対象を実施することを言います。
(c)例えば当該特許が標準技術特許としてパテントプールに入っており、誰でも適当な条件で通常実施権の許諾を受けることができると前言されているときには、対象外です。
→パテントプールとは
(d)これによりオープンイノベーションを促進することができると期待されます。
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留意点 |
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