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@特許権や意匠権は公開の代償として与えられるので、将来の公開対象を国に開示する出願手続をとる必要があり、創作の内容に応じて出願形式を選ばなければなりません。しかし出願形式の選択は必ずしも容易ではなく、出願後に他の形式を選択するべきだったと出願人が考えることがあります。そこで意匠から特許への出願変更を認めています。
A出願変更に係る特許出願(「変更出願」という)に、分割出願と同様に出願日の遡及効が認められるため、次の条件が課されます。
B変更出願の明細書・請求の範囲・図面(「明細書等」という)に記載した事項が、出願当初の原出願の願書等の記載及び図面等の記載の範囲内にあること。
特許出願の明細書には、発明の技術上の意義を理解できるように発明の課題や課題解決手段を記載し、発明の効果を記載しなければなりません。しかしながら、特許出願人が意匠登録出願の願書や図面等の範囲を超えて新規事項を変更出願に含めてしまうと、不適法な変更出願となります。
C変更出願の明細書等に記載した事項が、変更直前の原出願の願書等の記載及び図面等の記載の範囲内にあること。
意匠登録出願の出願書類から補正によって削除した事柄を、特許出願人が変更出願の出願書類に含めてしまうと、不適法な変更出願となります。意匠法では原出願の範囲で補正ができるという規定がなく、一旦削除したものを復活することができないからです。
D出願変更の時期は、意匠登録出願の最初の拒絶査定の謄本送達日から3月又は意匠登録出願の日から3年です。
意匠登録出願の日から3年としたのは、特許出願の出願審査請求の期間と対応させたものです。最初の出願形式として特許出願を選択して出願審査期間をフルに利用した場合と対応して、この期間であれば審査を不当に遅くしたといえないからです。
但し、3年の期間を経過した後でも最初の拒絶査定の謄本送達から3月以内であれば特許出願への変更が可能です。
E出願変更の効果として、原出願は取り下げ擬制されます。
(a)まず原出願は取り下げ擬制されます。
(b)また出願変更に係る新たな特許出願は、元の出願である意匠登録出願の出願時にされたものと擬制されます(出願日の遡及効)。一般に、意匠登録出願と特許出願との間では先後願がない(先願主義による調整が行われない)ため、元の意匠登録出願の出願日と変更出願をしたときとの間に第三者の特許出願があったときには、その第三者から見ると、自分の特許出願が先願だと信じていたのに、出願変更によって突然に先願者が現れるということも理論上ありえます。
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