[判決言い渡し日] |
平成18年 6月28日 |
[発明の名称] |
情報記憶カードおよびその処理方法 |
[主要論点] |
特許出願の拒絶審決(進歩性の欠如)を取り消す判決の拘束力・意見書を提出する機会の保障 |
[判例の要点] |
(a)審決取消しの判決が確定したときの拘束力(政事件訴訟法第33条第1項)は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、再度の審理を行う審判官は、取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されません。 (b)特許出願の拒絶査定に対する不服審判において、審判官が原査定と異なる拒絶の理由を発見したときには特許出願人に対して再度の拒絶理由通知を送付して意見書提出の機会を与えるべきところ、特許出願を拒絶する根拠となる条文(進歩性欠如)が同じであっても、主引用例を差し替えることになる拒絶理由の変更は、審決の結論に重大な影響を与えるから、“異なる”拒絶の理由に該当します。 |
[本件へのあてはめ] |
(a)本件審決は、刊行物1発明のICカードを用いたシステムについて、 @ICカードの残高を読み取り、処理をした後に、ICカードに残高を書き戻すか、 Aセンターの残高ファイルから残高を読み込み、処理をした後に、ICカードに残高を書き込むか、のいずれであるかであると認定しています。 しかし、第1次判決は、前記のとおり、「刊行物1のICカードを銀行カードとして用いるのであれば、ICカードから『残額』を読み取り、出金後にこれを更新するという動作をしているものではないといわなければならない。」、「銀行口座の真の残高をICカードに記憶させることがあると認めることはできない。」と認定しており、 刊行物1のICカードから「残高」を読み取ったり、「(真の)残高」をICカードに記載することはない旨の認定をしているということができるから、本件審決の上記認定は、@はもとより、Aも、第1次判決の認定に反するものといわざるを得ません。 (b)事件が特許庁に差し戻された後に特許出願人に再度の拒絶理由通知を出さずに拒絶査定に挙げられていない引用例により拒絶審決をしたことに関して、被告(特許庁)は、“本件審決は、特許法29条2項(進歩性)違反を理由とするものであるから、 ・拒絶査定と根拠法条が同じであること、 ・特許出願時の技術常識や周知技術を認定するに当たって、特許出願人に意見を述べる機会を与える必要はないこと からすると、原告らに意見を述べる機会を与えなかったとしても違法ではない”と主張しています。 しかしながら、本件では、審決の判断における主引用例が拒絶査定の理由とされていなかったのですから、以前の拒絶理由通知と根拠条文が同じであるだけで特許出願人に意見書を提出しないことが正当化されるわけではありません。特許出願に係る発明の技術的意義を明らかにするために特許出願時の技術常識や周知技術を参酌する場合には、意見書を提出する機会を与える必要はありませんが、本件はそうした場合には当てはまりません。 |
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