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●平成10年(ワ)第8345号・第17998号 (本訴請求:特許侵害差止請求権不存在確認・容認 反訴請求:特許権侵害差止請求・棄却)


 

 [判決言い渡し日]
平成11年12月21日
 [発明の名称]
養殖貝類の耳吊り装置
 [主要論点]
分割出願時の発明の概念の拡張に対する禁反言の適用の是非

 [判例の要点]
 請求の範囲中の発明特定事項の意味に広狭2つの解釈があり、
・狭い解釈が本来の日本語の意味として妥当であり、かつ、
・当該発明特定事項の意義が、原出願(親特許出願)からの出願分割の際に狭い意味から広い意味に拡張した事情がある場合には、
 包袋禁反言の原則より当該事項に関しては狭い概念に解釈することが妥当であります。

 [本件へのあてはめ]
 本件特許の請求の範囲中の「ロープおよび養殖貝類の稚貝の耳部を積層状に並べ」という文言のうちの「積層状に並べ」という文言に関しては、水平置きに限るという狭い解釈と、水平置き及び垂直置きの双方を含むという広い解釈とがあるところ、用語の本来の意味からすると水平置きと解釈するのが妥当であり、かつ、本件特許出願は分割出願であるところ、原出願の明細書には、ロープと稚貝の耳部との位置決めにつき、「上下に積層状に重なるように」するものとされており、分割出願の条件からすると、“上下に”の要件を外すと分割出願の効果を認めるべきでないことを考慮すると、特許権の行使に際して、そうした広い解釈を行うことは禁反言の原則から許されません。そうすると、係争物は垂直置きの形式を採用しており、本件特許発明の技術的範囲に属しませんので、差止請求は認められません。

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