[判決言い渡し日] |
平成30年 4月13日 |
[発明の名称] |
ピリミジン誘導体 |
[主要論点] |
進歩性の判断において発明の構成要件として膨大な選択肢を含む先行技術の引用例適格性 |
[判例の要点] |
進歩性を否定する根拠として、引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明と認定することはできないと認めるのが相当であります。 |
[本件へのあてはめ] |
@本件特許発明は、当該特許出願について主張された優先日前に頒布された主引用例甲1及び副引用例甲2の組み合わせにより当業者が容易に発明できたと主張されており、 甲2には、一般式で示される化合物のうちの「殊に好ましい化合物」のピリミジン環の2位の置換基R3の選択肢として「−NR4R5」が記載されるとともに、R4及びR5の選択肢として「メチル基」及び「アルキルスルホニル基」が記載されています。 Aしかし、甲2に記載された「殊に好ましい化合物」におけるR3の選択肢は、極めて多数であり、その数が、少なくとも2000万通り以上あります。 従って、R3として、「−NR4R5」であってR4及びR5を「メチル」及び「アルキルスルホニル」とすることは、2000万通り以上の選択肢のうちの一つになります。 Bさらに甲2に関して次の事実が認定されています。 ・甲2には、「殊に好ましい化合物」だけではなく、「殊に極めて好ましい化合物」が記載されているところ、そのR3の選択肢として「−NR4R5」は記載されていない。 ・甲2には、一般式(I)のXとAが甲1発明と同じ構造を有する化合物の実施例として、実施例8(R3はメチル)、実施例15(R3はフェニル)及び実施例23(R3はフェニル)が記載されているところ、R3として「−NR4R5」を選択したものは記載されていない。 Cそうすると、甲2にアルキルスルホニル基が記載されているとしても、甲2の記載からは、当業者が、一般式(I)のR3として「−NR4R5」を積極的あるいは優先的に選択すべき事情を見いだすことができません。 |
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