[判決言い渡し日] |
平成11年1月28日 |
[発明の名称] |
徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤 |
[主要論点] |
均等論第1要件の“本質的部分”の意味の解釈(特に特許出願の経緯を参酌した発明の課題解決原理の参酌) |
[判例の要点] |
@特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分、 言い換えれば、右部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解するのが相当です。 A対象製品との相違が特許発明における本質的部分に係るものかどうかを判断するに当たっては、単に特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に取り出すのではなく、 特許発明を先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか、それともこれとは異なる原理に属するものかという点から、判断すべきです。 |
[本件へのあてはめ] |
@本件特許発明である徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤は、速効性ジクロフェナクナトリウムと、ジクロフェナクナトリウムに所定の物質で形成する腸溶性皮膜を施してなる遅効性ジクロフェナクナトリウムからなるところ、 A特許請求の範囲及び特許明細書の記載と特許発明出願当時の公知技術とを総合すれば、 ・ジクロフェナクナトリウムの皮膜物質として腸溶性物質である三種の物質を選定した点、 ・ジクロフェナクナトリウムに腸溶性皮膜を施した徐放部と、該皮膜を施さない速放部を特定重量比率で組み合わせたことにより、ジクロフェナクナトリウムという特定の有効成分に対してすぐれた徐放性を有する製剤を生み出した点 において、従来技術にない解決手段を明らかにしたものと認められ、右の点が本件特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分、すなわち本質的部分というべきであるため、 B前記皮膜物質を特許請求の範囲に指定された三種の物質以外の物に置き換えることを内容とする原告の均等論の主張は採用することができません。 |
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