トリューズの発明原理40
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特許相談・特許調査/進歩性 |
新聞の書評で「トリューズの発明原路40」という興味深い書籍が紹介されておりましたので、取り寄せて読んでみました。 著者のトリューズはロシアの審査官で、技術分野を超えてさまざまな発明の原理を40パターンにまとめて問題解決プロセスとして提言しています。発明の原理といっても、個々の自然法則ではなく、分割して考える、抽出して考える、というような考え方の核心に触れる思考ツールを整理したものです。技術開発の担い手である技術者にとってはもちろんですが、弁理士にとっても役に立つのではないか、と思って一読しました。例えば特許出願に先立って、発明者との打ち合わせ(特許相談)をするのですが、発明者は常に最適のモノを求めますので、発明としてこじんまりとまとまっていることが良くあります。 発明者はこんなこと当たり前だと思って口にしないことの中に重要な事柄が埋もれており、それを引き出すことで、発明の裾野が広がり、上位概念化した発明を特許出願することができる場合があります。アイディアを引き出すための手掛かりを上述の思考ツールが与えてくれそうな予感があります。 この本の冒頭部分に「ある分野で新たに解決された問題の9割は、実はほかの分野で既に解決されている問題である」ということが書かれています。9割という数字が妥当かどうかは別にして、特許出願に係る発明に、別の分野の技術要素の転用によって成り立つものが多いことは、特許の実務家はみんな知っています。かつては発明の技術分野というものを限定的に解釈して、技術分野が異なるだけの特許出願が無理に行われる場合がありました。そうした傾向に歯止めをかけたのが粉末圧縮成形機事件(→昭57(行ケ)86号)です。錠剤成形機とレンガ成形機との間で、粉末から成形品を成形する原理が同一ということで技術分野が同一と認められ、進歩性を否定されました。 いまでは国際特許分類などが発達し、こうした場合に技術分野が同一かどうかが問題となることはなくなりました。しかし、特許出願に係る発明が、同一の技術分野でなくても隣接分野からのアイディアの転用に該当することはあり得ることであり、特許出願の前に予めきちんと特許調査することは重要なことです。 |
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