今岡ニュース

2014年11月6日(木曜日) 特許ニュース

著作権の非親告罪化(その2)


特許出願・明細書・特許調査/非親告罪化/著作権

 最近、TVなどでTPPの交渉がいよいよ大詰めの段階に入っている、知的財産分野の分野が論点となっているという報道がなされています。交渉がどう進んでいるのかという点に関して具体的なニュースはありませんが、一頃、TTP交渉で著作権が非親告罪となるのではないかと報道されていましたので、これに関して言及したいと思います。

 仮に著作権が非親告罪化された場合に人から質問されるだろうと思うこととして、“マンガの同人誌のようなものは出版できなくなってしまうのですか?”ということがあります。これに関しては、“判例では原則的にいわゆる「パロディ」を許容しない立場をとっているので、それに準じて考えて下さい”、とお答えすると思います。つまり原作を創作の素材として新たな創作をすることに規制がかかっているのに、原作を真似ただけの作品が許されるのかどうかです。法律解釈としては、判例を客観的に事例にあてはめるしかありません。

 しかしながら、法律論はひとまず置いて、“真似る”という行動は、技能の習得に重要な意味を持っています。弁理士業界のことをいうと、特許出願の業務、特に明細書の記載の技術の習得は、他人の文章の真似からスタートします。日本の特許出願でも米国の特許出願でも、初心者は、ある状態・形状・動きを表現するときには日本語・英語でこう言うと記録して、次に実践で表現を使ってみるのです。もちろん特許出願の準備段階では発明の把握が最重要なのですが、表現が拙ければ把握した内容が伝わりません。その結果、同種の状態・形状・動きに関して同種の表現が多数の特許出願で見られることになります。

 このことは特許調査においても有利に働きます。ある状態・形状・動きに関して先行文献を調査しようとするとき、その技術分野でその形状等に関して普通に使用される表現でキーワード検索をしようとすると、ある程度の検索ができるのです。本格的な特許調査ではキーワード検索を予備調査として先行技術文献を集め、特許分類を拾い出して本調査を行うのですが、仮にある状態等に関して明細書作成者の表現が千差万別で同種の表現を見ことが殆どないという状況であると、キーワード検索はほぼ無意味になってしまいます。

 特許出願で使われる特許用語に著作物性があるのかどうかは問題でありますが、これに関連してスローガン事件(平成13年(ワ)第2176号)で「ボク安心 ママの膝よりチャイルドシート」という比較的短い言葉に個性を認め、著作物性を肯定しています。但し、スローガンとは異なり、弁理士が自分で考え出した特許表現に関して著作権を主張するということは殆ど考えられないので、これまで議論にもならなかったのです。

 真似ることの需要と創作者の保護とのバランスは、非常に重要で困難な問題です。


 
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