燃料電池自動車メーカーの挑戦−オープン&クローズ戦略
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オープン&クローズ戦略/特許の活用/特許出願 |
年が明けて、最近特許業界で話題になっているのがこのニュースです。トヨタ自動車が燃料電池車関連で保有する約5千件以上の特許(特許出願中のものも含む)について通常実施権を無償提供するというのです。 特許出願は、本来、技術を開示する代わりに独占排他権を取得して、市場において独占的な利益を取得し、研究投資を回収するために行うものです。無償で実施権を提供するというのは、特許関係者にとっては、清水の舞台から飛び降りるほど勇気がいることでしょう。 同社の担当者の話では、燃料電池車の普及を優先して、水素ステーションなどのインフラの整備を図るためであるということです。全て自社で独占しようとすると、燃料電池車に代わる別の技術が台頭してくるおそれがあるからです。 企業が保有する特許群のうち基本特許は他人に使用させず、それ以外の特許は他社に開放する戦略を、オープン&クローズ戦略といいます。 その先駆けを切ったのはアメリカのインテル社であるといいます。“インテル入っている”のCMで知られるインテル社は、多数のパソコンメーカーに対して半導体を供給する会社でしたが、CPUに関して特許出願したコア技術は自社で独占し、その反面、PC周辺機器の製造技術はオープン化しました。 それにしても、本来はライセンス料をとるのが当たり前であり、無償での提供は思い切った踏み込んだ戦略であります。業界によっては、特許出願をして独占権を持っているだけで競争力を確保することが難しいのが昨今の状況です。特許の活用をどう考えるのかというのは、企業にとって重要な課題ですし、我々弁理士もそれについて研究することが必要となりました。 積極的に未来を切り開いていく気概、新しいことに挑戦する姿勢こそ、これからの時代に求められるものであるのでしょう。 |
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