商標・鳥の戦い “鳥二郎”に対する異議申立は認められず
|
商標出願/商標の類似 |
焼鳥チェーンの鳥貴族と鳥二郎との間で、前者が商標出願した商標(「鳥二郎」をデザイン化したもの)の登録に対して、後者が異議申立をしたが、登録を認められなかったということが判りました。 このHPの商標かわら版(→異議2014−900320号「鳥二郎事件」)で概要をお伝えしましたが、異議申立理由の一つは、同一又は類似のサービスに使用される、先願の登録商標と類似しているから登録するべきではないということです(商標法第4条第1項第11号)。 [本件商標] [指定商品] 飲食物の提供 [対比商標] (引用商標1) 第5353761号 商標:炭火串焼 鶏ジロー 指定役務:串焼きを主とする飲食物の提供 (引用商標2) 第5353762号 商標: 指定役務:串焼きを主とする飲食物の提供 特許庁は、登録商標と類似しないと判断したのですが、類否の難しいケースですので、ここで論評したいと思います。 一般的に、商標の類似の態様には、商標の外観の類似、商標の称呼の類似、商標の観念の類似とがあると言われています。外観類似は視覚を通じて、称呼の類似は聴覚を通じて認識されるものです。また観念の類似は知覚を介して認識されるもので、例えば“王様”と“キング”とのように意味内容が一致しているために、混同(商品の出どころの混同)を生じる可能性が高い場合です。 もともとは、類似の態様の一つに当てはまれば全体として“商標の類似”であると判断されるという考え方が主流でしたが、昭和43年2月27日の氷山印事件(昭和39(行ツ)第110号)の最高裁判決に「商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」という考え方が示され、単に類似の態様に該当するか否かだけでなく、全体としての考察を要求されるようになりました。 本件の異議決定は、上記の判決に基づいており、本件商標と引用商標とはともに同一の称呼(トリジロウ)を生ずると認めた上で外観が著しく異なるから、非類似であると判断してます。 しかしながら、最高裁判決の事例では、対比された商標の称呼は、「ヒョウザン」及び「ショウザン」であり、同一ではありませんでした。そうした点では、今回対比された商標の方がよりきわどいと言えます。 「飲食物の提供」という取引の実情を考慮すると、利用者は店の看板を目当てに鳥貴族のチェーン店、或いは、鳥二郎の店を探すのだから、「鳥二郎」を図案化して赤の矩形の中に統一的に配置した本件商標と、引用商標1(「炭火串焼 鶏ジロー」)及び引用商標2(トリジローを図案化し、ロの中に”TORI JIRO”の文字を入れた商標)とは十分区別できる、と特許庁は考えたのではないでしょうか。私はそのように推察しています(もっともそう推察しているだけであり、そのような考え方を肯定している訳ではありません。商標の取引の状況にはさまざまな場面が考えられるからです) 異議決定書にはその点に関して「同一の称呼において類似するとしても,外観において明確に区別できるものであって,観念において類似するとはいえない」としか述べていません。もう少し結論に至った経緯を詳しく説明してほしいものです。 |
ニュース見出しへ戻る |