特許の活用−海外の事情と日本的事情
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特許出願/特許の活用 |
財務省が7月8日に5月の経済収支を公表しましたが、そのうちの「知的財産等使用料」が3909億円となりました。これは、過去最高の金額であり、国内企業が海外から受け取る特許などのライセンス料が増えていることを表しています。その背景として、日本企業が海外への活発に特許出願しているという事情があります。日本の企業が海外進出するときに現地に子会社を作ると、子会社は親会社の特許を使用するため、日本の親会社へのライセンス料が増えるのです。 ちなみに特許権による保護(特許出願に対する仮保護を含む)は基本的に各国独立です(特許独立の原則)。日本で特許出願をして権利を取得しても、その保護が自動的に他国に拡張するのではなく、別に各国毎に特許出願をしなければ、他国での保護は受けられません。外国へ特許出願を予定している事業者の方から、“何か国程度特許出願をすればよいのか。”と質問を受けることがありますが、そうした場合には、海外生産を前提とする場合には、“少なくとも生産国として一国、最も消費を期待する国を少なくとも消費国として一国”を出願してどうかと私はアドバイスするようにしています。 生産国に対して特許出願をして現地生産の環境を整える、その反面子会社からライセンス料の形で資金を回収する。このように身内である組織を通じて特許の活用を図るのは日本人の得意とするところです。 しかしながら、これとは別に最近注目を浴びている特許の活用法があります。これは、オープン・イノベーション、或いは技術Search索型オープンイノベーションと呼ばれるものです(→オープンイノベーションの態様)。 これは、新しい商品開発に当たって自らの課題を見い出し、その課題を実現するような技術を世界中から募り、外部の技術(好ましくは最高級の技術)を核として、自社技術に応用して商品化を行うものです。 そうすることにより、自社内で全ての技術を開発する場合に比べて商品化のスピードを高め、同業他社に先んじて市場のニーズに対応するのです。ある革新的な技術を開発した場合に、その応用先は必ずしも一つの技術分野に限ったものではなく、異業種に展開できる余地がある、というのがオープンイノベーションの基本的な考え方です。 例えばオランダのフィリップス社は、油を使わずに揚げ物を作る調理器具(ノンフライヤー)を世に出しました。これは、熱風をまんべんなく高速循環させる技術を利用して、食材の中に存在する脂を使って揚げる装置ですが、開発の鍵となった熱風循環の技術は外部から導入したものであるということです。 日本人は、生真面目ですので、自分で出来るであろうことは自分でしようとします。しかし、上述のノンフライヤーの例にあるように、外国では、一企業がこうした特許戦略で世界市場において躍進した事例が近年多くみられます。このようなオープンイノベーションの下で、有効な特許を有する事業者を探索して選ぶ、或いは、他人から選ばれるような特許の保有を目指すというのが今後有効となりそうです。 |
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