今岡ニュース

2016年1月26日(火曜日)特許ニュース

標準必須特許の差止請求に関する公正取引委員会の指針案


特許出願/特許の活用/技術標準

 今月21日、公正取引委員会は、技術標準の実施に必須の特許(標準必須特許)に基づく差止請求権の行使がどういう場合に認められるのか(独占禁止法違反にならないのか)ということに関して指針を発表しました。

 アメリカ合衆国では、特許権による差し止めに関して、回復不能な損害があって損害賠償などでは救済が不十分であることなどの条件を定めた判例がありますが(→eBAY判決とは)、日本では、特許法上は差止請求権の行使に関してこうした規制はありません。

 しかしながら、自由に差止請求権を認めてしまっては困る場合があります。
 
 技術標準は、技術の普及を使命の一つとしており、特許の活用(特許出願人/権利者の保護)との調整が必要です。例えば、通信技術に関して複数の企業が集まって共通の規格(標準)を策定しようとすることがあります。苦労して需要者にとっても各企業にとっても有用な規格ができたのに、例えば策定会議の参加者がその規格の実施に必須の技術を予め特許出願しておき、差止請求権を行使したりすると、何のために技術標準を設定したのか判らなくなります。

 多くの策定会議では、参加者に対して技術標準に関連する技術についての特許出願/特許の情報を提出させるとともに、それが標準必須特許となる内容であるときには、参加者に対して、
 実施許諾の条件、
 無償の実施、或いは有償であるが合理的・非差別な実施許諾(→RAND宣言)、
 有償であるが公正・合理的・非差別な実施許諾(FRAND宣言)、
 などを提示させるのが通常です。

 こうした仕組みに実効性を持たせるために、独占禁止法により標準必須特許に基づく差止請求権を規制する必要が生じたのです。

 公正取引委員会は昨年7月にも同様の指針を示しましたが、侵害者が「ライセンスを受ける意思」を示せば差止請求権の行使は認められない旨の内容を含んでいたため、権利者に一方的に不利であるという批判が集まりました。ライセンスを受ける意思を示しつつ、ライセンス交渉を長引かせられては困るからです。

 今後の指針案の行方が注目されます。
 
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