内容 |
@「香気を発散する感圧粘着テープ」事件(昭42(行ケ)107号)
事件の種類…拒絶審決取消請求事件
本件考案…ロール状感圧粘着テープの粘着剤層に適当な配合香料を担持させ、粘着テーの使用時に香気を発散させ、事務を快適ならしめようとするもの
引用例…医療用ばんそこうまたは外用鎮痛貼付剤。
{発明の構成・作用に関する裁判所の評価}
(イ)感圧粘着テープの粘着剤層に香料を担持させるにあたり、粘着剤と香料とが互いに他を損うことのないよう、相互に適合した物質を選択するようなことは、当業者が当然配慮すべき事項にすぎず、その点に格別困難な技術課題が存することを認めるに足る資料もない。
(ロ)ロール状に巻回した感圧粘着テープは、きわめて周知であり、かかる粘着テープは、その形態の当然の結果として、粘着剤層を外気にさらすことなくよく持続的に内包担持し、巻き戻しのつど、巻き戻し部分だけの粘着剤層を露出し粘着作用を発揮させる効果をもつことも、きわめて周知であるからこの粘着剤層に香料を担持させることにより、原告主張のような作用効果を奏させうるであろうこともまた、きわめて容易に想到しうるものといわねばならない。
{技術分野の相違に関する裁判所の評価}
事務用品たる感圧粘着テープとテープ状のばんそうこうとは、時により互いに代用されうることは日常の経験上明らかであり、また、原告が右両者を製造することを業とする会社であることについては、原告の明らかに争わないところであるから、両者は技術分野を共通にするものということができる。したがつて、両者がその目的において原告主張の差異を有するとしても、引用例の粘着剤層にハッカ脳を配合する技術思想から、感圧粘着テープの粘着剤層に香料を配合する本願の技術思想を想到することが、当業者にとりきわめて容易であると認定することに誤りがあるとはいえない。
Aこの事例を取り上げた理由は、事務用テープと医療用テープとの相違から「極めて容易」ではないという論理付けが可能かどうかを争点としているからです。裁判所は、事務用テープ及び医療用テープとの間では用途の共通性があるため、考案の進歩性を認めることができないという立場をとりました。
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