体系 |
進歩性(考案の) |
用語 |
考案の進歩性のケーススタティ(引用例と比較した有利な効果) |
意味 |
発明の進歩性は特許出願時の技術水準から「容易に」創作できたかどうか、考案の進歩性は出願時の技術水準から「極めて容易に」創作できたかで判断すると条文上では定められていますが、実務上はその相違は微差であると言われています。ここでは、考案の進歩性を、引用例と比較した有利な効果の観点からケーススタティします。
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内容 |
@「散粉機用散粉ホース」(実公昭38−165に対する異議申立事件)
{事件に至る経緯}
特許出願として拒絶されたので実用新案登録出願に出願変更して出願公告となり、さらに異議申立となり、異議を退けて登録に至った事件。
{出願公告時の権利範囲}
図面に示すように柔軟な薄い材料により管状に形成したホース1の一側に多数の噴出孔2を縦方向に配置し、ホースの取付口4を散粉機に接続するようにした散粉ホース。
{異議申立の内容}
「柔軟なホースに適宜の小さな噴霧孔をその縦方向に配設し、そのホースに圧力水を通して噴霧するようにした散水装置」の引用例などから極めて容易に考案することができた。
{補正後の権利範囲(下線部を変更)}
柔軟な薄いフィルム材料により管状に形成したホース1の一側に多数の噴出孔2を縦方向に配置し、かつ、そのホースは少なくとも噴出孔からの噴流の反力により浮揚可能であり、さらにホースの取付口4を散粉機に接続するようにした散粉ホース。
{審査官の判断}
動力散粉機を運ぶ人とホースの末端を持つ人が相対峙した位置で散粉機を運転するときは、ホースは風圧により膨らんで長い連続した棹状になり、噴出孔からの噴流の反力によりそれ自身軽いホース1は上向きに浮揚するので、ホースはたるむことなく、中間に何らの支持物を必要としないで軽く保持することができ、作業員の逐次移動により連続的に薬剤散布ができる。こうした作用効果は引用例にはない。
A上記の事案では、特許出願として拒絶となり、実用新案登録出願をして登録されたものですが、特許出願の拒絶の時点と実用新案登録の時点との間に請求の範囲を補正しているので、単純な比較はできないと考えます。
進歩性審査基準には、“引用発明と比較した有利な効果明細書等の記載から明確に把握される場合には、進歩性を推認するのに役立つ事実として、これを参酌する。”と述べています。もっとも本件の場合、“噴出孔からの噴流の反力によりホースを浮揚させる”というアイディアは面白いのですが、それが“引用例と比較した”有利な効果と本当に言えるのかは微妙であると考えます。
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留意点 |
参考図59
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