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①商標の働きに対する伝統的な考え方から言えば、商標が付された商品が人から人へと転売・流通し、取引の度に人の目に触れる際に商品の出どころを表示すること(出所表示機能)を発揮することです。需要者は、商標を通じて合ったことのない生産者(或いは事業者)を認識し、当該事業者の商品を評価し、そして評価が良かったときの商品への好感度が業務上の信用として化体するのです。
②従って、例えば誰もが顔見知りの集落内での取引であって、その商品を生産する者が誰か分かりきっているときには、識別標識である商標の出番はありません。
③そうした趣旨から、商標法上の商品は、流通性を有する者と解釈されるのです。
④判決例としては、昭59(ワ)5703号(中納言事件)で次のような判断が示されています。
「被告は自己の店舗内で顧客に料理を提供しているが、商標法二条一項の商品とは商取引の目的物として流通に向けられた交換価値を有する有体物と解されるところ、店内で提供する料理等の飲食物は右要件に該当しないので商標法上の商品とはいえない。」
⑤この事例では、店舗で提供された懐石料理に関して、商品の流通性が否定されましたが、これ以外に、喫茶店で提供されたカップに注いで提供されたコーヒーなども同様です。
取引者が仲介して人から人へ渡るものでないからです。
これに対して、コーヒー店でコーヒー豆をひいて袋入れして販売したら、商標法上の商標たり得ます。
⑥電子情報財の流通性
電子出版物や電子計算機用プログラム等の電子情報財については、それが本当に商品として流通しているのかをよく考える必要があります。
近年では、電子情報財の機能だけをインターネット上で使用させる業者(application service
provider)があります。例えば処理をしたいデータをインターネット上で送信し、送信先で処理を行い、処理の結果をインターネットで返すという具合です。
このような場合には、電子情報財がダウンロードされ、流通している場合と異なり、商標法上の商品とは言えません。 →商品とは
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