体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
出所混同 |
意味 |
出所混同とは、商品又は役務(以下「商品等」という)の出どころ(出所)を需要者が混同し、誤って認識することをいいます。
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内容 |
@出所混同の意義
(イ)商品に使用される商標(以下「商品商標」という)の場合
主に集落内部で物を売買している古代には、この物を作った人間が誰かということを買い手は容易に認識することが可能でした。
しかし、貨幣経済の発達とともに、商品は、生産者の手を遠く離れて流通するようになり、何段階もの売買を経ることが通常であるため、需要者が出所認識することが困難となりました。
上述の商品商標は、商品に付され、商品ととともに流通することで、商品の出所(代表的には生産者)を表示する便利な矢印として用いられるようになりました。需要者にとって生産者に対する信頼性は商品を選択して売買するときの重要な要素であります。
(ロ)役務に使用される商標(サービスマーク)の場合
サービスマークは、商品商標に遅れて出現し、そして商品商標と同様に出所表示機能を発揮するに至りました。もともと役務は、例えば個人の店舗で食事を提供するという営業形態から、店主と客との結びつきが強いものです。しかしながら、食事の提供とともに、持ち帰り用の食べ物を商品として提供したり、店舗名(或いは自己の営業を表すマーク)を広告に載せてにより遠方からの集客が期待するようになったり、多数の店舗をチェーン展開するようになると、役務の出所を表示する機能をサービスマークが担うようになりました。
(ハ)出所混同の具体的内容
出所混同は、同種の商品・役務に2以上の事業者が相紛らわしい商標を使用することで、商標の出所混同行為を阻害する行為です。
商品の場合には、商品商標を付されて、例えば生産者甲・乙・丙から、取引者を経て、需要者A・B・C・Dの手に届きます。典型的な流通形態としては、取引者は、生産者側と結び付きが強い卸売業者(取引者1)と、需要者側と結び付きが強い小売業者(取引者2)とを含むため、生産者と需要者との距離は大きくなり、特に商標の出所表示機能が重要となります。生産者甲・乙・丙が相紛らわしい商標を使用すると、それらの者の商品を店舗で同時に目にする需要者Aは、生産者を区別する手立てがなくなり、出所混同を生じます。
A出所混同の「出所」の意味
ここでの「出所」とは、商品の生産者・取引者、役務の提供者を含みます。すなわち、生産者だけではなく、取引者が自己のブランドに合う良質の商品を生産者から選択して取引者の商標を販売することは、通常行われることです。
B出所混同の範囲
出所混同の範囲は、商標の著名度の具体的事情により左右されます。通常は、一般に同種の商品(例えば同一事業者が取り扱うのが普通の商品。例・文房具)ですが、商標が著名になれば異種の商品にまで出所混同の範囲が及ぶことがあります。
C出所混同の種類
前述の通り、出所混同の範囲は商標の著名度等の具体的な事情に左右され、商標の使用頻度と密接です。しかしながら、商標法は現実の使用を登録要件としない登録主義を基本としますので、登録出願の際に未使用の商標も審査対象となり、具体的な事情のみで登録の可否を判断することができません。そこで取引の経験則上から普通に使っていれば出所混同を生ずるであろうと予想される場合を一般的出所混同といい、これに対して具体的事情により混同を生じている場合を具体的出所混同ということがあります。
D出所混同の規定
商標法は、一般的出所混同の防止を図るために同一・類似の商品等について同一・類似の商標の使用を排除する商標権の効力を認め(商標法第25条、同37条第1号)、具体的出所混同を防止するために防護標章制度(同64条)を設けています。さらに出所混同のための各種制度を設けています。
→出所混同防止を防止するための規定
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他法との関係 |
商標は、出所表示機能ととも、品質保証機能を発揮します。品質には商品の優秀さや事業者の技術力(例えば優れた技術を特許出願して権利化していること)を含みます。個々の特許の存在を需要者にアピールする手段として、特許表示(同法第187条)がありますが、事業開発を継続的に行い、事業者としての業務上の信用を築いたときには、これを商標権として保護する必要があります。特許と商標とは企業の知財戦略の両翼を担うものであり、出所混同の防止は商標の機能を保護するために必要なことです。
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留意点 |
(参考図74)
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