内容 |
@不正使用による登録取消審判の趣旨
商標権は、登録商標の範囲に商標権者が独占排他的に使用することができ(専用権)、登録商標の類似範囲で商標権者が他人の使用を排除できる(禁止権)という二段階の効力を認めています。後者は、商品等の出所混同を防止するためのバッファーゾーンと考えられます。
従って商標権者が禁止権の範囲で他人の商品等と誤認・混同を生ずる行為をすることは商標法の趣旨に反し、不適切です。
そこでの不正使用に対する制裁規定として、本審判を導入しました。
A不正使用による登録取消審判の請求要件
(A)不正使用の範囲は、登録商標の類似範囲(禁止権)です。
(B)不正使用の態様
商品等の質の誤認に関しては、例えば清酒を指定商品とする「○○正宗」を焼酎に使用することをいい、商品の質の劣悪を含みません。
例えばそれなりの質の商品等を廉価で提供する事情者として需要者から信頼を得ているのであれば、市場内での競業品との質の優劣は必ずしも“不正”に結びつかないからです。
商品等の混同に関しては、登録商標「△△」を他人の著名商標「△△丸」に改変するごとき場合をいいます。
他人には、使用権者を含みます。
(C)故意に関して
本審判の請求では、故意を要件とします。禁止権の範囲で他人の信用をただ乗りする行為を防止する趣旨だからです。
(D)本審判は何人も請求できます。不正行為に対する制裁規定だからです。
B不正使用による登録取消審判の請求の効果
(A)取消審決の確定により商標権が将来的に消滅します。
(B)商標権者であった者は、審決確定の日から5年間登録商標又はこれに類似する商標に関して指定商品等又はこれらに類似する商品等について商標登録を受けることができません。本条が制裁規定であることがこれにより明確になります。
|