体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
称呼類似のケーススタディ2(図形・文字の組み合わせから派生する称呼) |
意味 |
商標の称呼は、商標の構成のうち文字部分或いは図形部分のどちらからも生じ得ますが、観念的に両者が結びつき、組み合わさって称呼が発生する場合もあります。そうした事例のうち事業者の氏名を参酌して称呼を認定した事例を取り上げます。
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内容 |
@事件の概要
〔事件番号〕
昭和29年(行ナ)第9号
〔事件の種類〕 商標登録願拒絶査定審決取消請求事件
〔本件商標出願の商標〕 「王」の文字を、菱形の各辺の中央部が切れ目のあるもので囲み、その輪廓の上部左に「王」、右に「菱」の文字を書いて構成されている原告の商標
指定商品…第五十類紙及び他類に属しないその製品
〔引用商標〕
外輪廓を肉太にし、内輪廓を細線とした二重の菱形輪廓内に、「大」の文字を書き、菱形の輪廓の下部左に「大」、右に「菱」の文字を書いて構成されたもの(登録番号第331972号)
〔審判部の判断〕 原告の前記商標は、(引用商標に対して)外観及び観念上では類似しないが、称呼の点において類似し、かつ、指定商品も互に抵触している。
(理由)審決は、右商標は、出願当時の出願人たる大野栄義の氏名から推して、「オービシ」又は「ヒシオー」と称呼されることも不自然ではないから、原告の商標から自然に生ずる「オービシ」又は「ヒシオー」の称呼と、共通すると説示している。
〔商標出願人の反論〕
引用商標の自然的称呼は、「ダイビシ」又は「ヒシダイ」であつて、これを審決のいうように、「ヒシオオ」又は「オオビシ」と呼ぶべきものでないことは、社会的通念である。(例えば、document
image、document image、document
imageの各商標は、何れも「ヤマダイ」、「カクダイ」、「ダイマル」と称呼して取引せられる。)
〔裁判所の結論〕 両商標は類似する。審決を維持する。
〔裁判所の判断〕
商標の選択の動機は千差万別であつて、これを一様に解することは、到底不可能であるが、商人が、その氏名又は商号の一部をとつて、商標構成の一要素とすることは、わが国における商取引の実情に徴して、決して稀な事例ではない。そのような商標にあつては、その称呼も、ひとり原告のいわゆる自然的の称呼ばかりでなく、これを使用する商人の氏名又は商号との関連においても、考察せられなければならないものと解せられる。
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留意点 |
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