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@商標の観念の意義
商標は、商品又は役務(以下「商品等」という)の識別標識であり、商取引においてこの識別機能が発揮されることにより、商標に業務上の信用(商標法の保護対象)が化体されます。
商標は、目や耳などを通じて認識された後に知覚により一定の観念として記憶されます。一度の取引で購入した商品、或いは提供された役務に満足した需要者は、それら商品等に使用された商標の記憶(観念)を手掛かりに同じ商品等を求めようとしますので、商標の観念が相紛らわしいときには、商品等の出所混同を生ずる可能性があります。従って商標の観念を理解することは、商標の類否判断において重要です。
A商標の観念の内容 (a)商標の観念とは、世間の人が一見して理解できるものでなければなりません。
(イ)商標の構成が一定の意味を暗示している程度では、商標の観念とは言えません。
例えば“鳩”の図形は平和のシンボルとしてよく用いられますが、だからと言って“平和”という観念を有するとまではいえません。
(ロ)また辞書を引いて初めて一定の意味であることが判るような場合にも、その意味は当該商標の観念であるとは言えません。
商取引の現場で商標を見てもいちいち辞書を引いたりしないからです。
(b)商標の構成から一定の称呼が読み取れるかどうかは、需要者層の注意力を以て判断します。
例えばイタリア語でペンギンを意味する「PINGUINO」(称呼:ペンギーノ)に関して、ペンギンという観念は読み取れないとした事例があります(異議2009−900071)。
(c)商標が複数の観念を有する言葉の組み合わせを有する場合(例えば“矢富士”)、両者の結びつきの程度如何では、分離観察され、個々の要素の意味合いが商標の観念として対比観察の対象となることがあります。
→観念類似のケーススタディ2(2つの観念の結合)
B商標の観念の取扱い
他人の周知商標又は登録商標と観念が類似しており、同一類似の商品等に使用される商標については、商標法第4条1項10号、商標法第4条1項11号違反で商標の出願が拒絶されます。
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